ぶうさぎ幼稚園
□僕とチョコと君
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向かうは一路、ゴミの集積場。
(あ〜〜もう!苛々するっ……!!!)
学校に来るなり、朝からアッシュはチョコと告白のラッシュに遭遇していた。
下駄箱に詰められ、机の上にも中にもチョコが置かれて。
見兼ねた教師から紙袋が手渡される程に大量のチョコ(しかも、本命らしきメッセージカード付き)をアッシュは貰っていたのだ。
隣で見ているルークは勿論面白くも何ともない。
別にルークは自分が一個も貰っていない事が嫌なのではなく…。
(……アッシュは、俺の恋人なのにっ…!!)
双子の兄で、恋人でもあるアッシュが自分以外の人からチョコを貰うのが嫌なのだ。
ルーク自身、独占欲が強い事は自覚している。
だけど、嫌なものは嫌なのだ。
恋する瞳で、アッシュを見てほしくない。
それがルークの苛々の原因だった。
「……ごめん、な」
手に持っていた紙袋を、集められたゴミ袋の下にルークは無理矢理突っ込んだ。
酷い事をしてる事はわかっている、それでもルークは勝手に彼女達の思いを捨てた。
これでもう、思いは届かない。
重い足取りで廊下を歩いていた時、中庭に知った姿が見えた。
中庭の隅、落ち葉でたき火をしている付近に先輩のジューダスとロニが居る。
話までは分からないが、ロニが土下座をしている辺りまたジューダスを怒らせた様だった。
(相変わらずすげー…。俺も見習…えないか…)
ジューダスの強さにルークは変な感心をしていた。
そんな事を考えていたが、階段に差し掛かった所で階段の踊り場から声がし意識はそちらに向かう。
それは聞き間違えるはずのない、愛しい人の声。
咄嗟にルークは隠れて様子を伺った。
「…ダメ、ですか…?」
「…俺には好きな……いや、これは受け取れない」
「でも、他の娘のは受け取って…」
「いや、これから返しに行こうと思っている。俺には……その気持ちは受け取れないからな」
言葉は柔らかいが、はっきりとした拒否だった。
揺らがないその姿に、女の子は泣きながら去って行く。
覚えのある光景、重なるのはあの日の姿。
まだあの時は揺れていたけれど…今、ルークの心は。
愚直なまでに、アッシュを愛するだけ。