ぶうさぎ幼稚園

□僕とチョコと君
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一年に一度の聖なる愛を伝える日。
結ばれた3組の恋人達も、悲喜こもごも恋愛模様…。



【僕とチョコと君〜ルークVer.〜】



(…これで、終わりっと。学校行く準備しなきゃなぁ…)


ラッピングのリボンをきゅっと愛らしく締めて、ルークは壁の時計を見る。

朝6時半、もうすぐ皆が起きて来る時間だった。
ルークはその包みを大事そうに抱えて自分の部屋に戻る。
それを机に置きエプロンを脱いで制服に着替えようとした時、仕切りの向こうから声がかかった。


「ルーク、起きてたのか?」
「あ、おはよーアッシュ。今日は特別早起きしたんだ」
「…そうか。下、先に行ってるぞ」
「うん、着替えたらすぐ行くな」


アッシュがドアから出て行く時に、ルークはにこりと微笑んで見せた。
それを見てアッシュも、穏やかな微笑を残して部屋を出て行く。

しかしパタパタと足音が去って行く度に、ルークの表情は浮かないものになって。
包みを手に取りいくばくかの逡巡の後、結局カバンには入れずに部屋を後にした。







昼休み、ルークは若干拗ねながらロイドやカイルと教室でご飯を食べていた。
ちなみにアッシュは、生徒会の関係でもう食べて行ってしまった後。

先程からずっと、ルークはアッシュの机の上にある大量のチョコ入り紙袋を憮然とした顔で見つめている。


「…なんかルークの機嫌悪いね?何かあったの?」
「う〜ん……今日、バレンタインデーだよなぁ?」
「うんうん!俺、リアラからチョコ貰ったよ!」
「俺は…父さんに貰ったぜ。…あ、そっか!アッシュばっかチョコ貰ってるから、羨ましいのか?」


いい感じに頭がちょっと足りない二人は、関係ない話を交えつつ見当違いな結論に至っていた。
昔から一緒なのだから、双子のブラコン具合から察して頂きたいものである。

しかし自分の世界に入り込んでいたルークにその会話は届かなかったようで、ルークは急に席を立った。


「ごちそうさま、俺ちょっと用事出来た。すぐ帰って来るとは思うけど」
「ん?そっか、わかった」
「よくわかんないけど、いってらっしゃい」


二人の見送りを背に、ルークは教室から出て行った。
……チョコの入った紙袋を手にしながら。
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