小説(long2)

□ハルカ、カナタ 第6章
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「ホント、美味しいですね♪それに竹に入っているのが風流で素敵」

桜は笑顔で水羊羹を口に運ぶ。
案山子もにっこりと笑顔を浮かべて頷く。

「でっしょー。ぜひ桜にって、思ったんだよねー」

「あら、ありがとうございます」

表情もしぐさもどんどん女性らしいそれになっていく桜に、案山子は思わず目を細める。

佐助が村を出て行ったおとは、桜もさすがにショックを隠しきれなかった。
何も出来なかった自分を責めて、散々に泣いた。
そんな桜を支え、そして夢を与えたのは綱手だった。

と言っても、綱でが自分と同じ医者になることを進めた訳ではない。
桜自身が自分のすべきこととして、それを選んだのだ。

そんな桜をずっと見てきた案山子にとっては、再び頼もしく自分の夢に向って突き進んでいる桜は
本当に立派だと思う。

(やっぱり、女の子は強いよねぇ・・・)

しみじみとそんなことを考えていた案山子に、桜は再びニッコリと笑う。

「えぇ、だから誤魔化されたりしませんよ。さ、センセ、話してちょうだい」

そんな桜に、案山子は頬を引き攣らせつつ、笑うしかなかった。



佐助は勢い欲顔を洗い、その手で髪を撫で付けてから近くにあったタオルで顔を拭う。
むくれていた顔も、少しは引き締まったように思う。
が、髪はなかなか直らない。

「とに、何でこんなに頑固なんだっ・・・」

艶のある黒髪は、意外と張りが強く、寝癖がつくとなかなか直らないのだ。
そもそも、後ろ髪はどうやっても立ち上がってしまう。

それはもう仕方がないとしても、他はせめて重力に従って欲しいと思う。
再び手を濡らし、それを撫で付けながら部屋へと戻る。
と、・・・。

「うーんっ・・・っ」

ナルトが部屋の真ん中で、胸の前で両手を組んで唸っていた。
それは、どこかで見たことのある忍者が術を使う時の格好と同じだった。

「何、やってるんだ・・・?」

大人しく押入れに入っているとは思っていなかったが、ナルトの表情がやけに真剣で。
早く隠れろとも、なかなか言えない状況だった。

「何でチャクラが練れないんだってばよっ・・・。おっかしーなー??」

ナルトはそう呟くように言って、さらにうんうんと唸る。

「チャクラ?」

聞き慣れない言葉に、佐助は首を傾げる。
そう言えば、最初に会った時にもナルトはそんなことを言っていた。

「術を発動するのに、チャクラがいるんだってばよ・・・」

ナルトはそう言って、はぁ、と溜息を付く。

「んっと、こうやって“身体エネルギー”と“精神エネルギー”を練りこむことを“チャクラを練
る”って言うんだってよ。そんで印を組んで術を使うのが忍の基本だってば」

そう言って、ナルトは再びその印とやらを組んで唸り始める。
佐助はしばらくそんなナルトを見ていたが、ハタと我に変える。

「わ、わかったから、とりあえずっ・・・」

桜のあの様子では、案山子がそれほど長く時間を稼げるとは思わない。
とにかく一旦は押入れに入ってもらおうとナルトを促したのだが。

「そうだっ!これならっ!!」

ナルトは顔を輝かせ、大声で叫んだ。

「お色気の術っ!!」



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