小説(long2)
□ハルカ、カナタ 第6章
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「えっと、・・・ごめん、なさいってばよ・・・」
ナルトは頬を指でポリポリと掻きながら呟く。
佐助は「へ?」と目を見開いた。
「ちょ、ちょっと待て・・・。何で、ナルトが謝るんだ?」
謝らなければいけないのは自分の方で。
「俺が、悪かったんだ。変なこと言って・・・」
そう言った佐助に、ナルトはぶんぶんと首を振る。
そして、ギュッと両手を膝の上で握り締める。
「俺ってば、“サスケ”のことになると、いつもムキになっちゃうんだって、ば・・・」
ナルトは少し悲しそうな顔をする。
「正直、自分でもよく、わかんなくて・・・。っていうか・・・んと・・・」
揺れる青い瞳。
佐助は胸が苦しくなって、ナルトに頭を下げる。
「すまない・・・。本当に、あんなこと言って。でも、お前を苦しませたかった訳じゃないんだ・・・」
鳴門に重ねて。
そうだったら良いなと、どこかで思っていのだ。
それは身勝手な、願望・・・。
ナルトの気持ちなど、何も考えていなかった。
けれど、ナルトは再び首を振る。
「佐助は悪くないってば、よ。俺ってば、ちゃんと考えたこと、なくて・・・。でも、・・・」
そう言って、真っ直ぐな瞳を向けてくる。
「いつかはちゃんと、向き合わなくちゃいけないと思う。でも、今はとにかく佐助を連れ戻したい
んだってば」
それが今、しなければいけないこと。
そこに迷いは、ない−−−。
ナルトはそう力強く言ってから、再び「へへっ」と笑う。
そう、今はまだちゃんと自分の気持ちを受け止める余裕もなくて。
それでも、今の自分が出来る精一杯のことをしたい。
“サスケを連れ戻すっ−−−”
そう、決めたのだ。
サクラちゃんとの約束でもあるけれど、それだけじゃ、ない。
自分がそう、決めたのだ。
それを改めて、心に留める。
「あ、ほらっ、冷めちゃうってばよっ。せっかく案山子先生が作ってくれたから、温かいうちに食
べるってばっ」
促されるまま、佐助はそれを口にする。
それを見たナルトは満足そうに尻尾をぶんぶんと揺らして。
「美味しい?」
「あぁ、・・・美味い、よ・・・」
確かにそれは、とても美味しく感じた。
案山子の気遣いや、ナルトの優しさが込められているから余計に。そして、・・・。
佐助はゆっくりとまたそれを口にしてから、ナルトに視線を向ける。
ようやく、ナルトをナルトとして見れた気がした。
これが“うずまきナルト”。
ナルトには、ナルトが生きて来た世界がある。そして、これから歩むべき道はそこにあるのだ。
それを見失わない強い心−−−。
諦めないという、強い意志。
「お前は絶対、俺が元の世界に戻してやるから・・・」
佐助は気づけばそう口にしていた。
そんな佐助をナルトは少し驚いたように見つめて。
佐助はそんなナルトを真っ直ぐに見つめ返す。
「俺ももう、迷わない・・・」
ナルトを元の世界に戻し、そして自分は、・・・。
自分も鳴門を取り戻す−−−。
例えその先に、辛い現実が待っていようとも。
いや、今なら信じられる。
鳴門はきっと、生きている−−−。
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