小説(long2)

□ハルカ、カナタ
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そう、今でさえ、里抜けしたサスケを許す事は出来ないという者は多い。
今回の件で、サスケの立場はさらに悪くなってしまった。

里抜けした時のサスケはまだ子どもだということもあり、大蛇丸に操られている可能性が高いと
上層部も考えていた。
里も、写輪眼という血継限界を受け継ぐうちはの生き残りであるサスケに対しては、どこか甘い
部分があったのだ。
けれど、それも今回の件で変わっていくだろう。


『うちはサスケは自らの意志で木の葉を裏切った』

その理由が、一族を皆殺しにした兄、うちはイタチへの復讐のためとは言え、それが許される程
忍の世界は甘くはない。


「サスケくんを無事に取り戻せるのは、あんただけなのよ。ナルトっ・・・」

その言葉を口にする自分は“ずるい”、とサクラは思う。
どこかでナルトに頼り切っている。そして、利用、している。

本当は、自分の力で何とかサスケを取り戻したい・・・。
でも、蘇る別れの記憶。

行かないで。と、泣いて縋った。
一緒に連れてって。全てを捨てても良いからと、懇願した。

けれど、サスケの瞳には、自分など映っていなくて。

再会したときも、そうだった。
サスケが見ていたのは、ナルトだけ、だ。

サスケが意識しているのは、ナルト。
全てを切り捨てたと言いながら、その瞳はナルトだけを真っ直ぐに見ていた。
それはきっと、サスケにはわかっているのだ。

もし、自分の“弱さ”が残っているとしたら、それはナルトの存在なのだと。
ナルトの底知れぬ強さに、サスケはどこかで怯えている。
それは、自分の強い信念すらも、覆してしまうのではないかという不安、なのか。それとも・・・。


サクラはゆっくりとナルトを見やう。
唯一の友であり、ライバル。互いに大切で、“特別”な存在。
強い、絆。
自分には辿り着けない、場所。

それに嫉妬を覚えつつ、それでもそれに縋るしかない自分−−−。


「サクラ、ちゃん。わかった、から・・・。だから、・・・」

今は一人にして欲しいってば・・・。
ナルトにそう言われ、サクラは頷くしかなかった。

「何か情報が入ったら、直ぐに来るから。大人しく、してるのよ?」

どこか気まずさを感じながらも、サクラはそう言い残し、踵を返す。
病室の扉に手を掛け、それでもやはり胸騒ぎがしてナルトを振り返る。
ナルトは両手でギュッと布団を握り締めて俯いた、まま。

いつも自分はナルトに甘えてる。
そんな自覚は、あった。
でも、・・・。


サクラが心配そうに振り向きつつ、部屋から出て行く。
その後ろ姿をナルトは少しだけ顔を上げて見つめた。
ゆっくりと閉められた、扉。
遠ざかる、サクラの気配。

握り締めていた布団を引き摺りあげて、ナルトは顔を埋める。

「ごめんね、サクラちゃん・・・。俺ってば・・・」

小さく、呟いて。
サクラの気配が完全に感じられなくなると、ナルトはバサッと布団を払い、ベッドから飛び降りた。
急いでズボンを履き、上着を羽織る。

どうしても、諦め切れなかった−−−。



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