小説(long2)

□一片に、舞う 最終章
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九尾にそう問われ、女は振り向く。強い、眼差し。それが、一瞬、ナルトとだぶる。

「何よ、あんたに貴様呼ばわりされる覚えはないわっ!うちの子にこんなことして、ただで済む
と思わないでよねっ!!」

そう言って九尾に指を突きつけ、頬そ膨らませるその姿は、

「ナル、ト・・・?」

サスケは思わず呟く。
時谷の言葉を思い出す。会えば、わかる。確かに、似ているのだと・・・。
けれど、印象が少し違う、とも言っていたはずだ。
しかし、今、目の前にいるのが巫女だとすれば、確かにナルトの母親なのだと思える。

真っ直ぐに見つめる瞳。その言動・・・。

まるでもう一人、ナルトがいるような錯覚。

「あんた、・・・本当に、・・・」

ナルトの母親だったの、か・・・?
サスケの小さな呟きに、女は少し困ったように笑う。

「そんなに見つめないでよっ、照れちゃうでしょっ!うん、でも、・・・あたしは現実にはいない
の。でも、今ここにいるあたしは、確かにうずまきクシナで、あの子の、ナルトのママよ」

どう?ドキドキしちゃう?
などと言って、その場でクルリと回る。

「・・・・・・」

正直、サスケは何と言って良いかわからない。言っている意味も、よく理解できない。
ただ、確かにナルトの母親だと、思う。

(そっくり、だろ・・・)

こんな状況で、肝が座っているというか、無邪気と、いうか・・・。

「ちょっとー、何よその無反応っ!あなた、ナルくんの恋人なんでしょう?ってことは、あたし
はお義母様よっ!挨拶とか、あっても良いんじゃない?!」

そう言って、再びバシャバシャと水をかき分け、こちらに近づいてくる。

九尾が低く唸る。

「危ないっ、来るなっ!」

サスケは九尾を押さえつつ、慌てて叫ぶ。
九尾のチャクラは、普通の人間ならば触れただけでもその瘴気に当てられてしまう。
たとえ精神体と言えども、受けたダメージは本体にも影響する。
けれど、一向に構わないといった風に、クシナは近づいてくる。
サスケは、息を飲む。

「大丈夫。母は強しっ、よ。それに、あたしはこいつに用があるの。その為に、ここにいるんだ
から・・・」

そう言って、サスケの傍らに立つ。
そして、じっとサスケを見つめる。

「ホント、いい男ね。ま、ミナトの方が何倍っ!も、かっこいいけどっ。でも、うん、認めたげる・・・」

だって、ナルトのために、ナルトを助けるために、ここにいるんでしょう?
そう言って、満面の笑みを浮かべる。

「安心、した。信じてたけど、ちょっとだけ、ね、心配してたの・・・。でも、・・・」

ちゃんと、愛されてた。
一人じゃ、なかった。
ちゃんと、思ってくれてる人がいる。守ってくれる人が、いる。

サスケはゆるゆると首を振る。

「守られていたのは、俺だ。俺を闇から救ってくれたのは、ナルトだった・・・。ナルトがいなけ
れば、俺は・・・」

ずっと、闇の中だった。きっと、それに飲み込まれ、今、こうして生きていることさえ、できな
かった・・・。
何度も裏切り、傷つけた。それでも、ナルトが諦めなかったから・・・。
サスケはギュッと唇を噛み締める。

「何で、そんな顔するの?あたし達の子よ?当たり前じゃないっ!」



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