小説(long2)

□一片に、舞う 最終章
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日記の最後のページには、姉のクシナに宛てた手紙が綴られていた。
それは死を覚悟した妹クシナの最後の言葉。
けれど、それは決して悲観したものではなく、心から幸せだと感じ、そして明るい未来を願い、
望むものだった。

それはとても、妹らしいもので・・・。
ただ、最後には、一人残していく息子への、僅かな心残り・・・。いや、それは母親としての愛情だ
ろう。ただただ、我が子の幸せを願う母としての、思い・・・。


「何故、私はもっと早く、これを読むことができなかったんだろうと、心底、後悔した・・・。けれ
ど、その時には既に、私の身体は隅々まで病に侵されていて・・・。起き上がることさえ、ままならな
かった・・・」

巫女はそう言って、ナルトに深く頭を下げる。

「本当に、ごめんなさい・・・。私はとても臆病で、そして、醜い・・・。自分のことしか考えられず、
あなたが苦しんでいたのに・・・、何も、出来ず・・・」

後悔の念に駆られ、焦燥に満ちた日々を送っていた時、あの男、薬師カブトが現れたのだ。
そして、告げられた真実。

「あなたが、木の葉でどんなに辛い日々を過ごしていたのか・・・。私は、何も知らず・・・。あの子が
最後に、私を信頼し、そして、願いを託していてくれたのに・・・」

妹の子は、四代目の子であることも明かされず、ただ、忌々しい“九尾”が封印された赤子として、
蔑まれ、疎まれ、辛い日々を過ごしているのだと・・・。

「あの男は危険だと、わかっていた・・・。わかっていて、私はあの男に縋った。せめて、死ぬ前に
あの子の願いを叶えたかった・・・」

せめて、自分に出来る事を、したかった。
それは、皆がようやく築き上げてきたこの安らかな生活を、壊してしまうだろうこともわかってい
たのに・・・。

巫女はそう言って、芹名にも頭を下げる。

「全ては、私の愚かさが招いたこと・・・。それに、あなた達までも、巻き込んでしまった・・・。私の
命で償えるのなら、いくらでも・・・。でも、どうか・・・」

「そのようなことっ・・・。お止め、くださいっ。我らは、良いの、です。自ら望んだ、こと。巫女様が
頭を下げる必要など、まして巫女様自身が己の命を軽んじることなど、あってはならぬのですっ」

でなければ、逆に命を落としたものが浮かばれぬ・・・。


芹名の言葉に、巫女は戸惑いの表情を見せる。
こんな自分のために、芹名の弟である椎名も、そして仲間の忍びたちが死んだのだ。
それは、許されることはないはずだ。恨まれても、仕方がない・・・。
それなのに、・・・。

「いいんだって、ば・・・。自分が、そう決めたこと。忍道を貫くこと。それが、忍だから・・・」

そう、静かに口を開いたのは、ナルト。

「自分が信じた道だから。それは、誰にも曲げられない。俺達忍は、そうやって生きてるんだっ
てば」

何かを信じ、信じ続けること。
その為に、生きる、こと。

「俺も、信じてきたから。だから、今の自分があるってばよ。自分の幸せは、自分で見つける。
自分で手に入れてみせるってば。だから・・・」

そんな風に、自分を責めたりしないでくれってば・・・。
ナルトはそう言ってはにかむ。

「確かに、寂しかった。ずっと、辛かった・・・。でも、それがあったから、今の自分がいるんだっ
てばよ。それを否定するつもりはないってば・・・」

だからこそ、仲間の大切さを知った。大切なものがあるのだと、知った。

「安心して欲しいってば。俺は今、すごく幸せだから・・・」

ちゃんと、自分で見つけたから。
たとえ、この身に“九尾”がいたとしても、一生、それを憎む人々がいたとしても。

「信じてくれる人がいるから。それがどれだけ幸せなことか、俺は知ってるってば」

だから、守りたい。自分も、信じたい。いや、信じて、己の道を行く。
それは、誰にも曲げることの出来ない、忍道。



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