小説(long2)

□一片に、舞う 第9章
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シカマルはそっと、ナルトの頭を撫でる。
こんなろころをサスケにでも見られたら、唯じゃすまないだろうと思いつつ、他にどうすることも
思いつかなかったのだ。

「シカマル〜・・・」

「何、だ・・・?」

「気が抜けたら、お腹へったってばぁ・・・」

「はぁっ?」

思わずシカマルは、再びガクッと崩れる。
ナルトは首だけ動かすと、シカマルを見上げ、「へへっ」と笑う。
その顔を見て、シカマルはそれでもホッと、安堵する。

「わかった。今はこれで我慢しろ。砂に戻ったら、カンクロウにでも聞いて美味いラーメン屋連れ
てってやっから」

そう言って非常食を取り出すと、ナルトは勢いよく起き上がりパクンとそれを口にする。
しかし、直ぐに目を見開き「ぐぇっ、ごほっ・・・」と咽る。
まぁ、それもそのはずだろう。見た目は四角だが、実はサクラ特製巨大兵糧丸の変形バージョンな
のだ。
恨めしそうに涙目のまま視線を向けるナルトに、シカマルは笑いつつも、優しくその背中をさすっ
てやる。

(こいつは、っとに・・・)

気にしていない、はずはないのだ。
それでも、心配かけまいと強がるのは、ナルトのクセだ。けれど、ナルトは言う。

「シカマル。俺、ホント、大丈夫だって、ば。そりゃ、ちょっとは残念だけど、・・・。でも、でも
さっ、俺にはみんながいてくえるから、大丈夫っ!」

強がりかも、しれない。でも、本当に、心からそう思うのだ。
ナルトは手にしたそれを再び頬張り、顔を顰めながらも咀嚼していく。


「はいは。って、んな無理して食わんでも・・・。で、話を元に戻すけど、結局、巫女さんは誰な
んすか、ね。ナルトと他人、って訳じゃないと思うんスけど・・・」

シカマルは表情を引き締め、再び巫女を見やう。
カカシに促され、巫女は口を開く。

「クシナは、・・・私の双子の妹、です」

巫女はそう言って、芹名に僅かに視線を移す。芹名はただ、黙って頷く。
どうやら芹名は、そのことを知っていたようだ。

「双子・・・。まぁ、それが一番ありうる話だよね。じゃあ、あなたのお名前は?」

ヤマトが巫女に問う。しかし、答えたのは芹名だった。

「巫女様のお名前も、確かに“うずまきクシナ”でございます。お二人はそうやって、育てられた
のです・・・」

二人の母親は、もともと身体が弱く、出産とともに命を引き取った。当時の巫女である祖母は既に
高齢・・・。他に近い血族に女児はいない。つまり、二人のどちらかが巫女の力を受け継ぐだろうこ
とは明白だった。
しかし、どちらが受け継ぐことになるのかは、誰にもわからなかった。
だからこそ、どちらがその力を受け継いでも良いように、同じ名が与えられた。
力を受け継いだ方が巫女に、そして、そうでなかった方が影武者として生きる運命として。

「けれど、本当に仲の良いご姉妹でした。聡明な姉君、そして明るく活発な妹君。我ら渦の国の忍
にとっては、どちらも大切な姫君でございました」

それは、本当の、こと・・・。

そして、二人が六歳の時、当時の巫女であった二人の祖母が亡くなり、その力は姉である今の巫女
に受け継がれた。しかし、その後直ぐ、第三次忍界大戦が勃発。

「巫女となった姉君は、国の守護者として、最後まで国を離れる訳にはいかなかった。そこで、
我々は一足先に、妹君は当時親交の深かった木の葉に、お預けすることにしたのです」

しかし、それは建前、だ。本来、影武者である妹が国に残り、本当の巫女である姉が木の葉に預け
られるはずだった。
だが、巫女となった姉のクシナは、母親に似て身体が弱かった。とても、一人で、見知らぬ地で生
きることなど出来そうもなかったのである。その上、子孫を残すことが出来るのかにも、正直、
不安があった。

つまり、今、巫女である姉の方が死んだとしても、妹が生きていれば力は継がれる。もし、子ど
もが出来なくても、妹がそれを成せば問題はないのだ。
しかし、妹の方が先に死んでしまった場合、現巫女が確実に子孫を残せるという保障は、ない。

最も大切なこと。それは、“巫女の力”の確実な継承である。
そのため、国は早々に、現巫女を差し置いて、妹の安全を最優先と判断したのだ。
そして恐らく、幼くとも聡明だった巫女は、そのことに気がづいていた・・・。

「その後のことは、以前シカマル殿にお話した通り・・・」



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