小説(long2)

□一片に、舞う 第9章
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「俺ってば、酷い息子だってばね・・・。俺のせいで、こんな目に会ってるのに・・・」

時谷たちの話では、この人は自分の中にいる『九尾』を何とかしようとしてくれていたのだ。
そのために、どれだけのものを犠牲にしたのだろう。
水月の話を、思い出す。
たくさんの忍が、信者が、カブトとその手下によって殺されているのだ。

「ナルト・・・」

シカマルはギュッと、掴んでいたナルトの手を握る。
僅かに震えている、手。

「お前のせいじゃ、ねぇ・・・」

そう、言葉にするのがやっとだった。


「シカマル、やってくれってば」

ナルトはそう言って、ギュッと目を瞑る。
シカマルは頷き、巫女の僅かなチャクラを探る。

「手に、チャクラを集中させろ。俺が合図したら、お前はそこにチャクラを流し込むだけでいい」

上手くいけば、チャクラは自然と融合する。
シカマルの言葉に、ナルトは「わかったってば」と頷く。

シカマルの額からはポトポトと汗が流れる。
巫女のチャクラは非常に僅かだ。それだけ、身体は相当弱っているということだ。

「ナルト・・・っ」

「んっ・・・」

シカマルの合図に、ナルトは手の平に集中させていたチャクラを一気に放つ。
青く、澄んだチャクラ。それは一旦巫女の身体を包み、そして、ゆっくりと吸収されていく。
抵抗はほとんど、ない。
次第に巫女の頬に赤みがさしていくのがわかる。

(こんなにすんなりいくとは、な・・・)

シカマルは思わず、小さく息を吐く。
ナルトにはああ言ったが、他人とのチャクラを融合させるのはそれ程簡単なことではない。

忍が個々に持つ根本的なチャクラ性質は、生まれ持ったものでもある。
もちろん、上忍レベルになれば自分のそれとは違う性質も使える者も多い。が、それはあくまで
“術”として使えるだけで、本来のチャクラ性質そのものが変わる訳ではない。
それに、・・・。

例え同じチャクラ性質だとしても、全く同じという訳ではないのだ。
性質が同じであれば、確かに融合はしやすい。が、それでもやはり他人同士のチャクラを融合
させるためには、互いの呼吸を合わせ、上手くコントロールする必要がある。
そのパイプ役をシカマルがするはずだった。が、二人の間ではほとんどそれを必要としなかった。
それが可能なのは、やはり血の繋がり・・・。


巫女の瞼が僅かに震える。

「シ、シカマルっ・・・」

ナルトは少し慌てたように、シカマルを見やう。
シカマルは無言のまま、そっと手を離す。長い睫毛が揺れ、栗色の瞳が覗く。
何度か瞼を瞬かせ、ようやくしっかりと開いたその目がナルトを見つめる。

(そう言う、ことか・・・)

シカマルは心の中で呟く。
目を閉じている間は、気付かなかった。いや、感じなかった・・・。
だが、その栗色の瞳が露わになった途端、巫女の表情は明確に、なる。
それ程まで、瞳の印象が強いのだ。
大きな瞳、その眼差し。それが、・・・

似ている、と思った。確かに輝く色は、違う。それでも、確かにナルトに似ていると感じる。
時屋の言っていた意味が、よくわかった。


「ナル、ト・・・」

形の良い唇が、そう僅かに動く。
ナルトはただ呆然と、それを見つめていた。



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