小説(long)

□一片に、舞う 第3章
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我愛羅にとっては、ナルトは特別な存在だ。
今、自分がくして風影として在るのも、ナルトのお陰だといっても過言ではない。
いや、人として、こうして生きていられることそのものが、ナルトによって得られたことなのだ。
だから、自分もナルトに出来る限りのことがしたかった。
ナルトには幸せになって欲しい。いつまでも、この笑顔を失わないように・・・。


我愛羅の視線を受け止め笑みを浮かべていたナルトが、ふっとその瞳に影を落とす。
さっきまでの幼い表情が、僅かに大人びたそれに変わった。

「どうした?」

我愛羅は眉を顰め、首を傾げる。
ナルトは何も言わずくるっと身体を返すと、欄干に背中を預け上を仰ぎ見る。
しばらく、何かを思案するように、ナルトはそうしていた。
けれど、意を決したように、視線を我愛羅に向ける。


「俺っては、みんなのこと大好きだってばよ・・・」

ナルトはそう言って、視線を伏せる。

「わかってるんだって、ば・・・。みんなが俺のために色々してくれてるんだって、こと。すごく嬉
しいんだってば。だから、みんなの期待には応えたい。・・・でも」

「ナルト・・・?」

ナルトはギュッと唇を噛み締め、そっとその腹の辺りで両手を組む。
それを見て、我愛羅は思わず顔を逸らした。


ナルトは・・・。
我愛羅は俯き、自分の足元を見やう。

「知って、いるのか?」

我愛羅の問いに、ナルトはゆるゆると首を振る。

「詳しいことは、わかんねぇ。でも、何かあるんだなってことは、わかる・・・。シカマルの指示で、
木の葉の暗部も動いているみてぇだし」

ナルトはそう言うと、僅かに微笑む。

「ごめんな、我愛羅。お前に、こんなこと言って・・・」

けれど、我愛羅にだから、言ってもいい気がしたんだってば・・・。
ナルトの小さな呟きに、我愛羅は短く息を吐く。


少し、自分達はナルトを甘くみていたのだろう。
ナルトに気付かれないように動いていたつもりだが、それがかってナルトに疎外感を与えていた
のだ。
人の感情には敏感なナルト。
そう、自分も、・・・そうだったから、わかる。

疎まれていることを知りながらも、それでも、いつも求めてた。
ずっと、“認めて欲しい”と、“愛されたい”と思っていた。
自分の存在を。
例え、この身に何があろうと、自分自身をちゃんと見て欲しかった−−−。

だから、何よりも辛いのは、疎外されること。
僅かにでも逸らされる、視線。誤魔化そうとする、笑顔・・・。
それが、自分のことを思ってしてくれていることだとしても、そのどこかよそよそしくなる態度は、
あの頃を思い出してしまう。

誰も、いなかった頃。
誰も、自分を見てくれなかったあの頃を。


「ホント、ごめんってば・・・。こんなの、俺の我が侭だって、わかってるんだってば・・・」

ナルトはそっと、その瞼を閉じる。

「でも、・・・俺ってば・・・、・・・」



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