小説(long)

□一片に、舞う 第2章
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「嫌な感じだな・・・」

そう言って、水月も僅かに顔を顰める。


決定的な証拠など、何もない。
けれど、今頃になってその存在が噂されるようになった“尾獣”を信仰するという教団。
その本拠地がある風の国の隠れ里、砂隠れで開催される中忍試験。
そこに、まるでナルトを誘い出すかのようなサスケの目撃情報。

どうも、何者かがある意図を持って動いているとしか思えない。

それが件の教団なのか、それとも別の誰かか・・・。
しかし、どちらにしてもその狙いは明らかだろう。

そう、恐らく、ナルトの中にいる、“九尾”−−−。


「けどよ、もし本当にあの九尾のガキを呼び寄せるためにサスケを使ったってんなら、それなり
にお前らのことを知ってるヤツが関わってるってことになるんじゃねぇのか?」

水月は腕を組み、サスケを見やう。

「少なくとも、サスケを餌にすりゃ、あのガキが釣れるって確信してなきゃ、サスケの目撃情報
なんて流しても意味はねぇしな」

水月の言葉に、サスケは頷く。


サスケも丁度、そのことを考えていた。
けれど、もし、本当にナルトを誘い出すことが目的だったとしたら、他にも手はあったはず。
つまり、これは自分達のことをある程度知った者が、ナルトだけではなく、サスケ自信も誘い出
そうとしている可能性が、高い。


「俺も駒の一つって訳、か・・・」

サスケは自嘲的な笑みを漏らす。
水月も気付いたのか、瞳をくるりと回すと「よくやるなぁ・・・」と半ば呆れたように呟いた。


恐らく、“九尾”を狙う何者かが教団を利用して何かをしようとしているのは確かだろいう。
暁に関わっていた者か、それとも“尾獣”の力を欲するどこかの隠れ里か、あるいは、木の葉の
誰か、か・・・。


しかし、・・・。
例え、ナルトと自分を誘い出したとして、どうするというのだ?
以前の『暁』のように、その力を己の自由にしたいならば、まずはナルトから“九尾”を引き摺り
出さなければならない。
しかし、『暁』が壊滅した今、それを為し得るほどの者達がいるというのだろうか。

(あれは、禁術の一種だ)

『暁』のメンバーは、ある意味選りすぐりの忍達だった。
そう、誰でもが簡単に出来る事では、ない。
そして、例えそれが出来たとしても、その力を使いこなせる者がいなければ、何の意味も、ない。


確かに、サスケならば写輪眼の力で、ある程度は“九尾”をコントロールできる。
だが、サスケ自身の意志をもってそれをしようとしない限り、無理な話なのだ。
そして、今のサスケには、そんなことをするつもりは微塵もない−−−。

そんなことをするぐらいなら、ナルトを殺して自分も死ぬ。
きっと、ナルトもそれを望むだろから・・・。

もちろん、決してそんな結末に持っていく気は、サスケにはさらさらない、が・・・。



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