小説(long)

□一片に、舞う 第1章
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そして、これからは個人戦−−−。
予選メンバー一人ひとりの実力を考えても、一対一の戦いならば、ナルトは恐らく全力を出さず
とも本選出場は確実だろう。

それだけでも、シカマルの肩の荷は随分と軽くなる。
今回、わざわざシカマルが木の葉の代表として彼らに同行したのには訳がある。
その一つは、

『ナルトを何としても中忍にしてこいっ!』

という五代目からの無茶な指令・・・。
綱手とて、形振り構っていられないだろう。けれど、こればかりはどうにかなるものでは、ない。
こういった時に面倒をみさせられるのは、いつもシカマルなのだ。

そんな役回りだとは思うが、それでもシカマルとてほっとくことはできなかった。
ナルトはシカマルにとっても大切な仲間。
そして、どこかで思っていた。次の火影は、そうなるべき者は、ナルトでしかないと。
けれど、・・・。


ナルトの中の“九尾”。それはいつまでもナルトに付き纏う、枷。
人間の力を遥かに超えたその存在は、いつも争いの種となる。

中忍試験と言えど、他里が何らかの策略を練っているとも限らない。
これだけの隠れ里が一斉に集まることなど、ほとんどないのだ。
何かを目論むには、絶好の機会でも、ある。


忘れては、いない。
自分達が初めて受けた中忍試験。それは最終試験の途中で、大蛇丸の策略によりぶち壊された。
“木の葉崩し”と呼ばれたそれは、三代目火影が命を懸けて大蛇丸を押さえ込み、何とか事なき
を得たが、その時も多くの忍が死んだのだ。

二度と、同じ過ちを繰り返してはならない−−−。


綱手が今回の中忍試験に固執したのには、それなりの訳がある。主催である砂隠れの里が木の
葉と同盟関係にあること。
そして、彼らは件の“木の葉崩し”の際には、木の葉同様に多大な被害を受けている。
その為、今回の中忍試験における砂の警備は随分と厳しい。

また、何より大切なのは、現在の風影である我愛羅を筆頭に、多くの者がナルトのことを良く
知り、それを理解している者であるということだ。


我愛羅にとって、ナルトはある意味特別な存在なのだろう。
もちろん、ナルトにとっても、そうだ。
同じように、尾獣をその身に宿し、辛い過去を背負ってきた。今の我愛羅にその枷はなくなっ
たが、きっと、消えることのない、辛い、過去。

それでも二人とも、それら全てを受け止め、己の大切なものを守ることを選んだのだ。
里は違えど、二人の思いは、きっととてもよく似ている。
良いことばかりでは、ない。人の弱さを、そして傲慢さをも知っている。
それでも、愛してやまないものがることを、知っている。


ナルトがようやく中忍試験への参加を承諾して直ぐのこと、砂からある情報が入った。
それは、シカマルがこの中忍試験に同行したもう一つの理由でもある。



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