小説(long)

□一片に、舞う プロローグ
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再び、視界は暗転し、突然、サスケの身体は渦巻く炎の中に投げ込まれた。
逃げ惑う人々の身体を、炎がまるで生き物のように喰らい付いていく。
響き渡る悲鳴、泣き叫ぶ、声。
いたるところに、人々の屍が積み上げられていた。
まるで、地獄のような、光景。

目の前には巨大な身体を揺らし、業火を吐き出しながら暴れ狂う九尾の姿。

「やめろっっ!!」

サスケは思わず叫んだ。
刀に手を伸ばすが、それが一瞬で灰となり、風に流れていく。
そして、自分の手も、徐々に、灰となり、消えて、いく。

「うあああぁぁぁっっ!!」



重い、瞼を、開ける。
目の前には、白くなびくマント。炎の図柄に、火影の、文字。
その先には、燃え立つ、大地。

「ミナト様っ!」

小さな子どもが、その元へと駆け寄る。

「イタチ、お前、こんなところで何をしているっ」

振り返ったその顔には、困惑の表情が浮かんでいた。
ナルトと同じ、金色の髪に、青い、瞳。
胸には小さな赤子を抱き、駆け寄るイタチに膝をつく。

「早く、逃げなさい。此処は、危険だ」

「嫌ですっ!ミナト様が行くなら、俺も行きますっ!」

マントの端を掴み、イタチは頭を何度も振る。
ミナトは優しく笑い、あいている方の手でイタチの頭を撫でる。

「僕は、火影だから。みんなを守るのは、僕の仕事なんだよ」

「俺だって、戦えるっ!ミナト様だけを、死なせたりなんかしないっ!」

「馬鹿なことを・・・」

ミナトはそっと、イタチの小さな身体を抱きしめる。

「イタチ、君はうちはの子だ。きっと、もっと強くなるよ。もっと強くなって、君もいつかは誰か
を守るんだ」

イタチはその胸にしがみ付き、再び何度も首を振る。

「どうしたの?いつもは、冷静な君が、こんな・・・」

「うちはの、せい、なんです・・・」

「イタチ・・・?」

「うちはは、火影を、ミナト様を・・・」

イタチの言いたい事を察し、ミナトはその口にそっと人差し指を当てる。
うちはのクーデター。
その情報は、すでにミナトも知っていた。
けれど、・・・

「イタチ、そのことと、今の状況は関係ないんだよ」

それでもイタチは首を振る。

「イタチ・・・」

「あの、化け物を、里に召喚したのは、・・・」

「イタチっ!」

ミナトはギュッとイタチを抱きしめる。その衝撃で、もう片方の腕に抱く赤子が、大きく泣き出した。
それでも、ミナトはイタチを強く抱きしめる。

「いいかい?それは決して誰にも言っては、いけない。僕と、約束するんだ・・・」

「ど、・・・して・・・」



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