小説(long)

□君を思う、あの空の下
2ページ/17ページ

「けれど、今の祖父を見ていると、私には、責めることなど、できないのです・・・」

修一郎は、再びその瞳を伏せる。

「祖父は、・・・もう、私の知る祖父では、なくなってしまった・・・」

ただ、そこに居るだけの、存在−−−。
そして・・・、

「怯えて、いるのです。祖父は、ここに閉じこもってから、少しずつ、狂い始めま
した。今では、私のことも、わからない・・・」

修一郎の言葉に、4人は言葉を失う。
弥一郎が、全てを動かしているのだと、ダンゾウに指示を与え、再び“九尾”の力を
手に入れようとしてるのだと、思っていたのだ。

いや、それならば、なぜ?
ダンゾウは、既に己の意志で、それを成し遂げようとしているということなのか・・・。


「全て、私が悪いのです・・・」

修一郎は、そっと、手の中にある鍵を見つめる。
この鍵を初めて手にしたその日のことを、修一郎は忘れることができない。
何も、言葉としては伝えてはもらえなかったけれど、あの日の祖父の顔は、自分の
大好きな祖父の顔、だった・・・。

「ネジさんから、話は聞きました。再び、“あれ”を使おうとしている者がいると・・・」

手の中の鍵を、そっと、握り締める。

「私が、いけないのです。忍の里から定期的に送られてくる文・・・。祖父が、こんな
状態になってから、私が祖父に代わり、その返事を・・・」

ただ、元気であると、伝えたかっただけなのだ。
それが、ある意味、彼らの活動を助長するものなのだとは、考えも、しなかった。


「祖父を、責めないで、ください。全て、私の・・・」

修一郎はその場に崩れ落ちる。

「祖父は、後悔、していたのです・・・。此処に閉じこもるようになる前から、祖父は
しきりに“それ”について、調べておりました。おそらく、それが祖父にできる唯一
のことだったのだと、今はわかります・・・」


「だったらっ・・・」

それまで黙っていたなるとが、叫ぶ。

「だったら、尚更、その爺ちゃんに会わねぇとっ。俺達だって、同じ忍だってばっ。
同じ忍でも、守ろうとしてる忍が居るってっ・・・」

身を乗り出すなるとを、シカマルが静かに制する。

「あなたは、俺達を本当は弥一郎殿に会わせたくないと、先ほど仰いました。
けれど、今、こうして、俺達を此処まで連れてきた・・・」

それは・・・。

「それ、は・・・」

シカマルの言葉に、修一郎はその顔を両手で覆う。

「あぁ・・・」

修一郎は、肩を震わせる。その頬に、涙が伝うのが、細く白い指の隙間から見て取れた。

「どうか・・・」

どうか、終わらせて、欲しい。

「楽、に・・・、してあげてください・・・。私には、できず・・・、こんなになるまで・・・」

この者達を連れてきても、尚、決心がつかなかった。

それでも、今なら、・・・言える。

「どうか、祖父を、殺してあげて、ください・・・」



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ