小説(long)

□君を思う、あの空の下
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18年前、如月家がまだ全盛を誇っていた頃、二代前の当主であった如月耶一郎が
『魔玉』を管理していた者であった、ということ。


耶一郎は既に90近い老体ではあるが、未だ存命である。しかし、現当主である修一郎
が家督を継いでからは、公の場に姿を現すことはなくなった。
だが、耶一郎の影響力は確かに残っている。この家が、未だ大名家としての地位を
有するのも、おそらく耶一郎の力によるものだろうと、綱では言った。


「里とて、忍不足だというのに、常に何人もの暗部を派遣していたんだからな」

綱手は自嘲的に笑う。

「しかし、火影さえも知らないところで、どうやって・・・」

シカマルが僅かに顔を顰め、綱手を見やう。

「そんなことができるのは、一人しか、おらんだろう。マダラの時には、結局、
尻尾を掴むことができなかったが・・・」

「まさか・・・」

綱手の言葉にネジが思わず声を出す。

「ダンゾウ様、が・・・?そんなはずは・・・。あの方は確かに武門派ですが、誰よりも
里を守ることを第一に考えいる方、です。マダラとの戦いでそれは証明されたはず
でしょう?」


ダンゾウ−−−。木の葉の暗部養成部門「根」のリーダーである人物。
ネジの言う通り武門派の指導者であり、穏健派の三代目とはずっと対立関係にあった。
そのために、マダラの件でも真っ先にその繋がりを疑われた人物だ。
しかし、ダンゾウの行動はあくまでも武門派として木の葉の里を守ることが目的であり、
他の不穏分子とは異なる部分もあった。
マダラの時も、最終的には里を守るために共に戦ったのだ。


「そう、だな・・・」

綱手はゆっくりと瞳を閉じる。

「里を守る・・・、か。確かに、あの男にとって“里の存在”は何より大切だろう。
なぜなら・・・」

“里は火の国のためにある−−−”


「あの男は私利私欲のために動いているのではない。全ては国の為・・・」

それは決して、“間違い”ではない。

「あの男は“火の国のため”に、この里を守っている。しかし・・・」

綱手は顔を上げる。

「同時に、火の国の為ならば、この里を犠牲にすることも、出来る・・・」

そう、だからこそ、その手に力を得ることを欲したマダラは、ダンゾウにとって
邪魔な存在となったのだ。


「18年前、恐らく『魔玉』を託されたのはダンゾウだ。ダンゾウは、うちはを、
うちはマダラを利用して火の国のために“九尾”を手に入れようとした」

「証拠は、・・・あるのですか?」

綱手の話を遮るように、ネジが問う。

「“九尾の繭”が消失した時点で、あの男の周囲に、意図的に情報を流した。九尾
はまだ、生きていると・・・」

そう、九尾の器である“うずまきなると”が生存していたのだということを。


ネジは眉を顰め、チラリとなるとを見やる。
なるとは僅かに俯き、黙って話を聞いていた。

「危険なことだとは承知の上、だ。しかし、私とて確証がなければ動くことはでき
ない。ダンゾウが関わっていないのならば、それは唯の気苦労に過ぎなかった
だろう・・・」

しかし、あの男は、動いた−−−。



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