小説(long)

□君を思う、あの空の下
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「いったい、何が正しくて、何が、間違っているんだろうな・・・」

綱手は呟く。

「世の中は変わっていく。しかし、変わらないものもある・・・。確かに、変わるものが
全て、正しいとは限らないのかもしれない・・・」

古き良き時代、そんなものも確かにあっていいのだ。
なぜなら、その時々、人は一生懸命に生きてきたのだから。
それを一括りに、『時代が変わったから』などと、言えるのだろうか・・・。

だからこそ、難しいと、思う。
明確な敵であれば、迷うことなく戦うことができる。
しかし、それぞれに思うとところがあるのならば、何故、戦わなければならない?
分かり合うことは、できないのか・・・?

けれど、この世の争いは、そんな僅かな行き違いから生まれているのかもしれない。


それぞれに、守りたいものが、ある。
そのために、命を懸けても良いと思うものが、ある。

人の業、この世の理。


「全てのことの答えが、一つだけとは限りませんよ」

それまで黙っていたカカシが口を開く。

「そもそも、答えなどあるのか、答えを出す必要あるのかすら、わかりません。
所詮、我々は“人”でしかない。人間の考える物差しだけで物事を測ることそのもの
が、愚問なのかもしれません」

けれど、それでも人は・・・。

「信じることのために、何かを守りたいがために、戦っている」


それを否定することは、できない。
人はそうやって、生きてきたのだ。
そうやって、この世界はあるのだ。

争いのない世界。誰もがそれを、望む。
傷つきたくないから、大切なものを失いたくないから・・・。
けれど、その望みこそが、争いを生んでいるのも、事実。

人が人として存在している限り、終わらない苦行。

「我々は、我々の望む道を行く。それしか、ないんです」


ただ、せめて、その意味を知らなければならない。
誰かが幸せになるためには、傷つき不幸になる者もいるのだということを・・・。
だからこそ、精一杯、悩み、考え、生きていかねばならないことを。
それは決して、弱さなどではない。
それこそが、『生きる強さ』−−−。

人が傷つく痛みを知らねばならない。
自分の存在が、己の幸せが、どれほどの幸福か、知らねばならない。
『命』というものが、どれだけ大切なのかということを、知らなければならない。


「わかって、いる。私も『火影』だからな」

そう、それらを全て受け止められずして、何が『火影』だ。
それを人々に教え、導いていくのが『火影』なのだ。



「動くぞ、カカシ」

綱手は立ち上がり、そう告げる。

「これまでの決着をつけよう。未来の、ために・・・」


カカシは静かに頷く。

「御意」

その姿は、煙とともに消える。
残された、静寂。


「未来は、お前達の手の中に、ある・・・」

綱手はそっと、呟いた。



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