小説(long)

□君を思う、あの空の下
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「やはり、動き出したか・・・」

綱手は腕を組み、その顔を顰める。
向かいに座るカカシは、表情を変えることなく、綱手を見据える。

「わかってはいたことだが、な・・・。やり難い相手だ・・・」



なるととサスケが目覚めて半年。
綱手は『火影』として、知らぬ存ぜぬを突き通してきた。
“九尾の繭”の消失。その事実は、すでに周知のものだ。
そして、それらはすなわち“九尾の存在”そのものの消失を意味し、里の民の多くは
そのことに安堵した。
忘れかけていたとはいえ、動き出せば、人々の記憶は蘇る。
決して忘れることなどできない、あの惨劇。
しかし、里は一貫してその生存を否定した。“消失”すなわちそれは“九尾の存在”
を否定するものであると・・・。

しかし、同時に上層部には、その可能性を僅かに漏らしたのだ。意図的に。
それに関して動いていたのはカカシだった。

うちはマダラが18年前、己の意志だけで九尾の力を手に入れようとしてのだとは考え
難い。そこには少なくとも、木の葉の里の意志が介在していたはず・・・。
何よりも、九尾の力を望んでいたのは『火の国』だからだ。

三代目は、真面目な性格ではあったが、誰よりも『木の葉の里』を愛し、その民の
幸せを願っていた人物でもあった。
しかし、そこには幾ばくかの確執があったと聞く。

だから、こそ・・・。
うちはマダラと繋がっていた者が、いる−−−。
そう、この里の中に。

恐らく、何よりも、誰よりも『火の国』を思い、忠誠を誓う者。
その者はきっと、なるとが生きていると知れば、“九尾の力”を欲するはず・・・。
なるとはある意味、生かされていたのだ。
そこには確かに、三代目の優しさもあった。しかし、それだけではなかったのも、
『事実』だ。
はるか昔から、大国はこぞって“尾獣の力”を手に入れようとしてきた。
その力を確固たるものとするために、“強大な力”を得るために。


わからなくも、なかった。
『国』のため・・・。
それを全て、否定するつもりは、ないのだ。
綱手とて、『火影』として、それは重々にわかっているつもりだ。
しかし・・・。

そのために、里を犠牲にしてよいとは、思えない。
忍びとて、人。同じように、幸せを願い、求める。だからこそ、“強く”ある。
だからこそ、『国』を守ることができる・・・。


卵が先か、鶏が先か・・・。
きっと、代々の火影が悩み、苦しんできたであろうこと。
そこに、答えを出したのが、三代目火影なのだろう。

忍を、道具から人へ、変えようとした。
それは決して、国を裏切るということではなく、本当に『国を守る』ために、必要
なことだと、判断したのだ。
だからこそ、三代目は、あの四代目火影を選んだのだ。

何よりも人を愛し、忍を愛し、その命をかけることのできた四代目火影に・・・。

その四代目の子が、“うずまきなると”なのだ。

このことを、なるとはまだ知らない。
それでも、なるとは確かにあの四代目の子なのだと、思う。

どんな命でも大切、なのだ。
国の民であろうが、忍であろうが、そこにどんな違いがあるのだろうか。
どれだけの人が、そのことに気付いているのだろうか・・・。



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