小説(long)

□君を思う、あの空の下
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「なぁ、シカマル。綱手のばぁちゃんは?」

ひょっこりとなるとの金色の頭が扉に覗く。

「ああ、五代目ならサクラを迎えに火影室に行ったぜ。サクラがお前らに会いたいん
ってんで、来てんだ」

シカマルの言葉に、なるとの顔がパッと明るくなる。

「サクラちゃんに会えるってばっ?!」

今にも飛び上がらんばかりに喜ぶなるとを見て、シカマルは顔を顰めた。

「お前なぁ・・・」

シカマルは半ば呆れつつ、手を伸ばし、小さくなったなるとの頭をぐしゃぐしゃと
かき混ぜた。

「ちったぁ、サクラのことも考えてやれよ」

「何、だってば?」

「だからだなぁ・・・」

シカマルはこめかみを押さえ、小さくため息を付く。
その様子に、なるとは首を傾げる。

「お前、サクラに会いたいか?」

「・・・?。もちろん、だってばよ?」

なるとは素直に頷き、シカマルを見上げる。

「2、3発、殴られる覚悟は、しておけよ」

シカマルは低く、呟く。
なるとが思うほど、人の気持ちはそんなには簡単ではない、のだ。


「あ・・・、うん。わかってるって、ば」

「なると?」

思わぬ返答に、シカマルは思わずなるとを見つめる。

「わかって、るってば・・・、サクラちゃんには、たくさん心配かけた・・・」

きっと、すっげぇ、怒ってるってば。
なるとは、へへっと笑い、シカマルを見つめ返す。

「それに、たくさん、辛い思いもさせちゃったんだろうって、わかってるってば・・・」

なるとの青い瞳がそっと伏せられる。

「それでも、会えるのは、嬉しいってばよ。2、3発どころか、ボコボコにされても、
平気だってば」

「なると、お前・・・」

「ちゃんと、謝らなきゃいけないって、思ってた。ちゃんと、話さなきゃいけないこと
も、あるってば」

そう言って、なるとは視線を上げる。
その先にいるのは、サスケ。


サスケはそんななるとを黙って見ていた。
たぶん、なるとの思うようにさせたいのだろう・・・。
シカマルはもう一度、なるとの頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。

「なるようにしか、ならねぇな。考えても仕方ねぇ」

でも、お前がきちんと考えてるなら、それでいい。
正直、シカマルは驚いていた。なるとの幼い姿に、自分は昔のなるとしか、見ていな
かったのかもしれない。
シカマルとて、サクラの気持ち全てを理解することは、できない。いや、する必要も、ない。
これは、三人の問題なのだろうから・・・。
なるとも、それをきちんとわかっているのだろう。


「お前も、ちったぁ、成長したってことだな。見目は縮んじまったけど、よ」

シカマルの言葉に、なるとはぷぅ、と頬を膨らませる。
けれど、すぐにその表情が真摯なものに変わる。

「俺さ、目覚めて直ぐのとき、自分のことしか、考えられなかったんだってば・・・」

その瞳が真っ直ぐに前を向く。

「周りにどれだけ心配かけたのか、どれだけみんなに迷惑かけたのか、本当は真っ先
に考えなきゃいけなかったのに・・・」



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