小説(long)

□君を思う、あの空の下
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「しばらくは様子を見るしかないな。お前達ももう少し休め」

綱手にそう言われ、サスケとは別々にあてがわれた部屋。
なるとは一人、ベッドの上で枕を抱きかかえ、それに顔を埋めていた。
本当は、サスケと一緒にいたかった・・・。けれど、それを言葉にするのが何となく躊躇
われた。

自分は“生きている”。そして、この木の葉の里に“戻ってきた”−−−。
そのことは、素直にうれしかった。
もちろん、3年もの時間が経っているなんて、思ってもいなかったけれど、綱手やカカシ
の変わらぬ態度に、まだ、実感できずにいるのも確かだ・・・。

けれど・・・。

なるとはふと、顔を上げ、自分の小さくなった両手を見る。
それは確かに自分の手。
多少違和感はあるものの、もともとは記憶にある幼い自分のそれ・・・。最初は驚き、
戸惑いもしたけれど、慣れてしまえば、受け入れられないことではない。
そう、自分が変わってしまった訳ではない。時間が経てば、また、成長する・・・。
そのことには何の問題もない、のだ。
けれど、その意味を考えてしまう。

思い出す、自分と同じように幼い姿に戻ってしまったサスケ・・・。
その姿を見たとき、あの時のことが、全部、夢だったのかと、思った。
記憶は、確かに残っている。
ようやく、気持ちが通じ合えた・・・。やっと手に入れた、大切なもの・・・。
サスケが触れた場所、サスケの言葉、全部、覚えてる・・・。

けれど・・・。
ズキリと、心が痛む。

これは、戒め、なのだろうか・・・。
なるとは思わず枕をギュッと抱きしめる。
自分なんかが、サスケに愛されてはいけないのではないか・・・。
きっと、自分はサスケの枷になる。
だから、なかったことにしろと、そう、言われている気がしたのだ・・・。


「・・・っく・・・、ふぇ・・・」

込み上げてくる涙を、止めることが出来ない。



「あんの、馬鹿っ・・・」
ベッドに横たわっていたサスケは、その身を勢いよく起こす。
そのまま駆け出し、部屋を飛び出す。
僅かな距離をおいて、そこにある白い扉。
サスケはノックもせず、その扉を開けた。


「何、泣いてんだっ、このウスラトンカチっ!」

突然のことに、なるとは思わず顔を上げる。
荒々しく開かれた扉、そこに現れたのは、サスケ・・・。


「サ、サスケぇ・・・」

涙でぐしゃぐしゃになったなるとの顔を見て、サスケは思わず駆け寄り、その身体を
きつく抱きしめた。小さく震える身体。

「馬鹿、やろうっ・・・。何、泣いてんだよ・・・」



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