小説(long)

□君を思う、あの空の下
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アカデミーを卒業して、スリーマンセルを組んだ二人の仲間。
里でも随一の血筋、血継限界である『写輪眼』を受け継ぐ優秀な少年と、変化の術
すらままならなかった落ちこぼれの少年。
“うちはサスケ”と“うずまきなると”。

最初の頃の二人は本当にケンカばかりで、スリーマンセルの存続すら危ぶまれた位だ。
それが少しずつ変わりは始めたのはいつ頃からだろうか・・・。


初めての国外任務、水の国での再不斬・白との戦いで、サスケはなるとのために重症
を負った。あんなにいがみ合っていたのに、サスケはなるとを身を呈して守ったのだ。
少しずつ変わり始めていた、二人の関係。
きっと、本人達は気づいていなかっただろうけれど、サクラはそれを知っていた。

その後の中忍試験。

試練を乗り越える度に、強くなっていく二人の絆。
それに伴い、感じる二人との距離。
同じスリーマンセルとして、二人がサクラのことを認めていないわけではなかった。それは
サクラもよくわかっていた。それでも、感じた、疎外感・・・。
いや、それだけではなかった。サクラは明らかに、『嫉妬』していた。



サクラはずっと、サスケに淡い恋心を抱いていた。
アカデミーでも抜群に女子から人気のあったサスケ。スリーマンセルが発表された
時には、嫉妬と妬みの視線を浴びながらも、その優越感に浸った。
一方のなるとは、サクラに好意を寄せていた。
それは誰から見ても明らかで、サクラ自身ももちろん知っていた。

自分が好きだった少年と、自分を好きだといっていた少年。

けれど、二人はいつの間にか、誰よりもお互いを気遣い、想い合っていた。
最初のそれは、確かに友情だった。
男同士の友情、それは紅一点のサクラにとっては、いつかは直面する葛藤−−−。
しかし、そんなことは百も承知だったのだ。
スリーマンセルを組んだときから、いつかは自分が体力的に二人に追いつけなくなる
ことにも気づいていた。
だから、その分、得意のチャクラコントロールを生かす方法を考えた。
それはある意味、くの一としての常套だった。

けれど、サクラは気づいてしまったのだ。


自分が心寄せる少年が、その目で追う存在。

自分を好きだといっていた少年が、本当に求める存在。


想い合う、それぞれの気持ち・・・。それはとても強く、そして特別な感情。
特にサスケにいたっては、既にそれを『自覚』しているようだった。


それを明確に意識したのは、サスケの里抜けを止めようとしたときだった。

サスケはサクラに優しかった。
きっとそれは、決して自分の意志が揺らぐことはないと、知っていたからだ。
その時、サクラは思い至った。
サスケにとってサクラは、これから進む道、その先に“影響を与える存在ではない”
ということを。

サスケが何よりも恐れていたのは、なるとへの己の感情。
自分を変えてしまいそうな、強い存在。
それは、“切り捨てる”という決断を必要とするほどのもの−−−。


それまで、僅かな疑心とともに心に潜んでいた感情が、勢いよく噴出してくるのを
感じた。それは、自分でも驚くほど、どす黒く、歪んだ感情・・・。

サスケは自分自身の感情を知っている。けれど、なるとは気づいていない・・・。


だから、なるとに泣いて縋った。
“サクラのために”、サスケを取り戻して欲しいと・・・。
なると自身がその気持ちに気づく前に、大義名分を与えるために。

“サクラちゃんとの約束のため”に、サスケを取り戻すのだと。



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