小説(long)

□君を思う、あの空の下
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「俺ってば、生きてるのか・・・?」

なるとは再び周りを見回す。
やはりここは見覚えがある。何度か来た、自分の腹の中、九尾の檻−−−。
しかし、自分がいるのはいつもとは違う。

(ここは、檻の“中”だってば・・・)

その証拠には、あの九尾が自分の間近にいる。そこにいる、自分とサスケ・・・。

「何が、どうなってるんだってば・・・?」

頭が混乱する。
だって、サスケはカカシに預けて、自分はマダラとの戦いに挑んだはず。

「なんでサスケがここにいるってば?」

なるとはサスケを見つめる。何かが違う・・・違和感・・・。
そうだ。あの時サスケが負った傷は背中のものだったはずなのに、今傍らにいるサスケ
には、全身に酷い傷がる。

「何があったんだってば・・・!」

思わず、なるとは九尾を睨みつけ叫んだ。


「喚くな、小僧」

顔を顰め、九尾は鼻息を漏らす。
その時、なるとはようやく気づいた。
九尾のチャクラが酷く小さいのだ。いつもその身に纏う禍々しいばかりのチャクラが
ほとんど感じられない・・・。

「少しは思い出したか?お前はうちはマダラとの戦いの後、二ヶ月近く眠っておっ
たのだ。我とともにな・・・」

九尾はその上体を僅かに起こし、なるとを見据える。

「えっ・・・?二ヶ月・・・も?」

「ああ。我もマダラとの戦いでこの様だ。だが、お前に死なれては困るからな。
しばらく強制的に眠らせたのだ」


「けど、じゃあ何でサスケがここにいるってばよ?」

あの時から二ヶ月も経っているのなら、尚更おかしいではないか・・・。

「そ奴がここに来たのは数日前だ。お前を探しておった」

九尾の言葉になるとの身体はビクンと震える。

「随分弱っておったがな。今よりは随分ましだった」


なるとは思わず九尾を見上げる。

「じゃあ、何で・・・。まさか、九尾・・・、お前がっ・・・?」

「我は何もしておらんわ。こ奴が勝手にしたことだ」

面倒くさそうに、九尾は吐き捨てる。

「この檻の中に無理やり入ってきおった。馬鹿な奴だ」

その時のことを思い出し、九尾は思わず鼻を鳴らす。


さすがの九尾もあの時は度肝を抜かれたのだ。
そしてあまりの馬鹿さ加減に、己に似つかわしくないことまでしてしまった。

「とりあえず傷口は塞いでおいた。死ぬことはないだろう」

生かしたのはただの気まぐれだ、そう言って九尾は顔を背ける。

「だが、もともと体力が弱まっていた上に、外に結界を張ってきたようだな。チャ
クラの消耗が激しい。回復には時間が掛かるだろう」


「サスケ・・・」

なるとはサスケの胸元にしがみつく。

(九尾の話が本当なら、サスケってば俺を向かえにきてくれたんだよね・・・)

「バカサスケ・・・。お前ってば、また無茶して」

なるとの青い瞳からいくつもの大きな雫がこぼれ落ちた・・・。



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