小説(long)
□君を思う、あの空の下
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気がつくと、そこは白い天井。鼻につくアルコールの匂い。
そして、体中を襲う激痛。
(俺は、生きているのか・・・)
痛みを感じるということは、そういうことだ。
まだ頭は霞がかかったようにぼんやりしているが、意識ははっきりしている。
腕を動かそうとしてみるが、うまくいかない。
首だけは、かすかに動く。
(だが・・・、これじゃあ、どうしようもない・・・)
思わずもれるため息。
「意外とあきらめがいいんだな」
静かな声が病室に響く。
「まあ、そんな身体じゃ自分で死ぬことすらできんだろう」
ゆっくり近づいてくるその姿は五代目火影。
さすがにその表情には疲労が色濃く滲んでいる。
「とりあえず、目が覚めたのなら問題はない。ひどい怪我だがな。あとはサクラ
にでもまかせるから何かあったらサクラに伝えろ」
そう言いながら枕元にあるいくつかの医療機器を操作すると、そのまま踵を返す。
「ま、まってくれ・・・」
その後姿に思わず声をかけた。
けれど、聞きたいことがたくさんあるはずなのに、次の言葉が続かない。
「お前はまだ混乱している。記憶も曖昧だろう。全ては落ち着いてから話す」
そう言って火影は姿を消した。
なぜ、自分はここにいる?
ようやくまともな思考が戻り始めた。
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