小説(short)

□希望
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「んじゃ、明日は慰霊祭だから、任務はお休み。・・・なんだけど、さぁ・・・」

カカシ先生が頭をポリポリと掻く。

「急なお使いの任務があってねぇ。悪いんだけど、サスケとなるとでちょっと行って来て欲しい
んだけど・・・」

その言葉に、俺は思わず顔を上げる。と同時に、隣に立つサクラちゃんが首を傾げ、口を開く。

「任務だったら、私も・・・」

「いやぁ・・・、簡単なお使いだから、実は任務って程じゃないんだよ。ただ、危険とかはないんだけど、
ちょっと遠くてね。日帰りは難しいからサクラは、ね。それに、慰霊祭のお手伝いもあるし」

カカシ先生は、ニコニコとサクラちゃんを見て言う。

ちょっと言い訳がましい、かも。でも・・・。
そっか・・・。
カカシ先生も、知ってるんだ。俺にだって、それ位わかるって、ば・・・。


きっと、じっちゃんが気を使ってくれてるんだなって、すぐにわかった。
正直、できれば里に居たくないと、思ってたから・・・。
受け止めなければ、と思っていた反面、逃げ出したかったんだ。
怖かった、んだ。本当は。
多分、そんな俺の思いは筒抜けで・・・。

だったら、俺独りで十分・・・。

「お使いくらいなら、俺独りで十分だってばよ」

サスケを付き合わせるなんて、できない。


サスケは優秀で、里のみんなから愛され、期待されてるから。
こんな俺のために、そんな任務に付き合わせるなんて、出来ないって、ば・・・。
サスケだって、本当のことを知ったら、そう、思うはずだから。


「ね、いいでしょ?カカシ先生・・・」

俺はカカシ先生を見る。そんな俺の頭をカカシ先生がポンポンと叩く。

「あのねぇ、なると」

カカシ先生が何かを言いかける。けれど、

「てめぇにまともな使いが出来んのかよ。このウスラトンカチ」

そう言って、話を遮ったのは、サスケだった。


「何をどこに届けるんだ?今日中に発てば間に合うのか?」

「サスケっ」

「うるさい。一応任務なんだろ。我が侭言ってんじゃねぇ」

サスケの言葉に、思わず唇を噛み締める。
サスケはそんな俺を無視して、カカシ先生に任務内容を確認していく。


「わかった。明日中に届ければいいんだな。おい、なると」

サスケは黙ったまま立ち尽くす俺に、視線を回す。

「結構遠いから、今夜中に出発するぞ。準備が出来次第、大門に来い」

有無を言わさずそう言って、サスケは踵を返す。


その後姿を見て、カカシ先生がそっと溜息を付く。

「カカシ先生、俺・・・」

何か言わなくちゃと思うのに、言葉が、出てこない。

「あんなでも、サスケはお前を心配してるんだよ。最近のお前が、元気ないから・・・」

カカシ先生は、小さく笑う。

「ほら、とっとと帰って準備しなさいって。もたもたしてると、サスケにどやされるぞ」

カカシ先生がもう一度、俺の頭をポンポンと叩く。

「頼んだよ。たかがお使いでも、下忍のお前達にとっちゃ、立派な任務だからね」

大きな、優しい手。
その手がゆっくりと離れ、心配気に顔を曇らせていたサクラちゃんをそっと促す。

「大丈夫。サクラはサクラのお仕事しなきゃね」

帰るよ。
そう言われて、サクラちゃんはカカシ先生と一緒に歩き出す。けれど、すぐに振り返ってビッと指先を
俺に向ける。

「なると、サスケ君に迷惑かけるんじゃないわよ。ケンカとか、しちゃだめだからねっ」

言葉はキツイけど、サクラちゃんの顔はまだ、心配そうに歪んでいた。


「わかったってばっ。大丈夫っ。サクラちゃんもお仕事がんばってってばっ」

俺はそう言って、ぶんぶんと手を振る。



みんなの優しさが、痛かった。
嬉しかったけど、心が痛くて仕方ない。心配なんて、かけたくない・・・。

だって、俺にはそんな資格、ないから・・・。



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