小説(long2)

□ハルカ、カナタ 第7章
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第7章-2


「“火影”、だと・・・?そんなものはとっくに・・・」

そう思わず呟いた佐助に、案山子は「まぁ、ね・・・」と頷く。

「確かに、一時期途絶えてたんだけど・・・」

らしくなく言い澱んだ案山子。
その表情から、案山子の言わんとしていることに佐助は気付いた。

「そう、か・・・。親父が死んだから・・・」

そう、そもそもそれを無理やり途絶えさせたのは佐助の父親である団扇不岳、だ。
その不岳も、既にいない。

「ま、はっきり言えばそういうこと、かな。でも、今じゃ木隠れ神社の神主とは切り離して考えら
れているし、このことを知っているのも相変らず極一部の人間だけだ・・・」

案山子はそう言って、よっこらしょと立ち上がる。

「とりあえず、詳しいことは火影様が直々に話してくれるよ」

そうのんびりと言った案山子を、佐助は苛立たしげに睨む。

「待て・・・っ。その今の“火影”ってのは、誰なんだっ・・・」

「あぁ、お前も随分んと世話になった人だよ。でも、覚えてるかなぁ・・・」

そう言いながら、案山子はチラリとナルトを見やう。
ナルトも驚いているのか、さっきまで泣いていたことなどすっかり忘れたような顔で案山子を見上
げている。

いや、ナルトとてもはやこの世界に誰がいてもおかしくはないと思っているはず。
ただ、さすがに“火影”がいるとは思っていなかったのだろう。

「まぁ、隠すつもりはないよ。ナルトにも、とりあえず確認しておきたかったし」

案山子は再びしゃがみ込んで、そんなナルトに視線を合わす。

「ちゃんと聞いてなかったよね。一応教えてもらえるかな?ナルトの世界にいる今の“火影様”の名
前・・・」

ナルトはゴクンと喉を鳴らす。
佐助も思わずナルトを見つめた。

「・・・今の火影は、綱手のばあちゃんだってばよ。五代目火影、だってば・・・」

ナルトの言葉に、佐助は目を見開く。

「綱、手・・・。まさか・・・」

綱手のことは、知っている。村で唯一ある病院の女院長だ。
そして、確かに覚えがあった。
鳴門が消えて直ぐ、駆けつけてきた村の人間の中に綱手はいた。そして、確かにその時、その場に
いる案山子たちに指示を出していたのは綱手だった。
その後、綱手の病院で面倒を見てもらっていたことも、薄っすらとだが覚えている・・・。

「あの女が、“火影”・・・」

佐助は思わずそう呟いて、案山子を見やう。

「ま、そういうこと。どうやら少しは覚えているみたいだね」

案山子にそう言われ、案山子は気まずさを感じて僅かに視線を逸らした。

鳴門のことがあるまで、綱手とはほとんど接点などなかった。
が、そんな佐助のこともあの時の綱手は随分と親身に面倒を見てくれたはず・・・。
それなのに、礼の一つも言わず、村を去ってしまった。

「気にするな。綱手様もちゃんとわかってる・・・。ま、嫌味の一つや二つ言われるかもしれないけ
どね」

佐助が考えていることがわかったのか、案山子はそう笑って言った。
そして、ナルトを促して再び立ち上がる。

「さ。んじゃ、行きますか。色々考えるのは、綱手様の話しを聞いてからだ」

そう、まずは佐助が知らなければならないのだ。
“団扇”だから、こそ−−−。



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