小説(long2)

□ハルカ、カナタ 第6章
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第6章-2


「サクラちゃんが来たってばよっ!」

興奮するナルト。
ナルトにしてみれば、会ってみたい気持ちもわかる。が、・・・。
案山子は申し訳ない気持ちでナルトを見やう。

「や、ナルト・・・。えっと、何て言うか・・・、桜はまだ何も知らないから、ゴメン、ちょっと隠れて
てくれるかな・・・?」

桜はナルトの知っている“サクラ”ではないのだ。
それに、いくら冷静な桜でもナルトの今の姿は刺激が強すぎる・・・。

「ごめんねぇ。後でちゃんと話すから、とりあえずは、ね」

それには佐助も少し納得がいかない。

「だったら何で、桜を呼んだんだ?!」

そう言った佐助に、案山子は首を竦める。

「だってさぁ、ナルトもこんな格好のままじゃいられないでしょ。色々不便だし・・・」

案山子はナルトのその姿を指差して言う。
確かに、自分のこと同様考える余裕はなかったのだが、ナルトは昨日と同じ服を着ている。

さすがに上着は脱いでTシャツ姿だが、それもその身体には随分大きくて肩からずり落ちそうにな
っていた。ズボンは幾重にも裾を捲り上げ、ウエストはベルトで無理やり止めている状態・・・。
さらに、尻尾の関係で、ある意味微妙なところでそれは止められていて。

よくよく見れば、余りにも不憫な格好だった。
こんな格好ではロクに外にも出られやしない。
いや、耳や尻尾がある限り、それはそもそも難しいのだが・・・。

それでも確かに動きにくそうで、同じ服を何日も着ている訳にはいかないのも事実。
それをどうにかしようと考えて、案山子は桜を呼んだらしい。
それでも、・・・。

「あいつ、まだこの村にいたのかよ。俺はてっきり・・・」

桜は優秀で、大学はそれなりのところに行くだろうと思っていた。
それはすなわち、村を出るということ。
佐助の問いに、案山子は頷く。

「もちろん、桜は今は村を出てるよ。んー、名前は忘れちゃったけど京都の方にある医大に通って
るはず。夏休みで帰省したって連絡が丁度あったんだよねぇ」

そう言った案山子に、佐助は思わず目を見開いた。

「医大・・・?あいつ、医者になるのか・・・」

確かに合っているような気もするが、ただ正直、自分は絶対に診て欲しくないと思う・・・。
不適な笑みを浮かべる桜の顔が頭を過ぎり、佐助は何故か悪寒を感じてぶるりと震えた。

「はいはい。詳しいことは直接桜に聞けばいいから、お前はとにかく準備してっ。俺もちょっとは
時間稼ぐからっ」

桜相手にどこまで出来るかはわかんないけどね。
と、頼りなげなことを言いながら案山子はバタバタと部屋を出て行く。
佐助も慌てて立ち上がる。
とにかく顔くらいは洗って、この髪を何とかしなければならない。

「ナルト、とりあえず今回は我慢してくれな。そうだな、あの押入れにでも隠れてればいいから」

佐助はそう言って部屋を出る。
玄関の方からは確かに懐かしい桜の声がした。


「お久しぶりですっ、案山子センセ!」

「久ぶりだねぇ。また一段と大人っぽくなったかな?んー、女の子はいいなぁ」

「センセ、親父くさいですよっ!それより、言われたもの持ってきたんですけど・・・、何でこんな
ものが必要なんです?」

「あー、ちょっと、ね。せっかくゆっくりしているとこ悪かったよ・・・」

「どうせヒマしてましたから良いんですけど。センセ、何か隠してません?」

「え?別にそんなことないよ?ま、立ち話もなんだし上がりなって。そうそう、丁度静音さんから
美味しい水羊羹貰ってたんだよね。食べない?」

「・・・ふーん。ま、とりあえず水羊羹は頂きます」

そんな会話をしながら、二人の気配はようやく台所の方へと消えていく。
案山子はどうやら、佐助のこともまだ桜には話していないらしい。
が、あの様子だと桜は何かあることに気付いているはず。

(急がないとヤバイな・・・)

何だがどっと疲れを感じるが、佐助はとりあえず急いで洗面所へと向った。



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