小説(long2)

□ハルカ、カナタ 第6章
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第6章-1


「佐、助・・・?」

襖の向こうから、ナルトの小さな声が聞こえた。
未だ布団の上に横たわり、ぼんやりと天井を見上げていた佐助は驚いてその方向を見やう。

「ナルト・・・?」

「うん・・・。えっとね、ご飯持ってきたってば。入っても、い・・・?」

佐助は慌てて起き上がり、答えるのももどかしくその場に駆け寄っていた。
それでも、僅かに息を吐いてから、できるだけそっと襖を開ける。
そこにはお盆を手にしたナルトが立っていて。

「あ、あれ?・・・もう、起きて平気だって、ば?大丈夫・・・?」

ナルトは心配そうにそう言って、背伸びをして佐助の顔を覗き込もうとする。
と、お盆が不安定に手前に傾いて。
佐助は慌てて手を伸ばし、それを何とか両手で支える。

「ご、ごめんってば、よ・・・」

ナルトも慌ててギュッとそれを持ち直し、二人でそのままその場にしゃがみ込んで。
ふと顔を上げれば、間近で視線か合わさる。

「あの、・・・っ」

ナルトは恥ずかしそうに頬を赤らめて、俯いてしまう。
そんなナルトを見た佐助も、何故か照れてしまって・・・。
それでも自分が何か言わねばと、佐助は恐る恐る口を開く。

「わざわざナルトが持ってきてくれたのか・・・?ありがと、な・・・」

そう言った佐助に、ナルトはパッと顔を上げて笑顔を見せる。

「ううんっ。あのっ、食べれそうって、ば・・・?」

上目遣いでそう言うナルトに、佐助は思わず頬を緩める。
そんな佐助を見て、ナルトは心底ホッとしたような表情を浮かべるとお盆を持ち直しそっと立ち上
がった。

「今、用意するってばよっ」

そう嬉しそうに言って、佐助の手からお盆を取り上げてトコトコと歩き、近くの卓袱台にそれを置
く。そしてそのお盆に載っていた一人用の土鍋の蓋を素手で取ろうとするナルトを佐助は慌てて止
めた。
「え?」と再び不安そうな顔を向けてきたナルトに、佐助はできるだけ優しい笑みを浮かべて言っ
た。

「バカ、・・・。火傷するだろ・・・」

まだ熱が残っていそうなそれに視線を向ければ、ナルトもそれを見つめて。
佐助が言ったことの意味を知って、鳴門はまた頬を赤らめた。

「そっか・・・。ごめ、・・・、こういうの、慣れてなくて・・・」

慌てたようにそう言って、一緒にお盆の上に載せられていた布巾を手にする。
佐助もホッとして、そんなナルトを見つめた。

たどたどしいながらも蓋を開けて、添えられた茶碗にそれを盛るナルト。
尻尾もゆらゆらと僅かに揺れていて、それを楽しんでいるのがわかる。

そんなナルトの後姿を改めて見つめながら、佐助は首を傾げる。

(なんで、ナルトが・・・?)

しかし、ふと案山子の顔が浮かんだ。
そう、きっと案山子が世話を焼いたに違いない。

正直、何とか謝らなければいけないと思っていたのだが、どうして良いものかと悩んでいたのだ。
きっと、そんな佐助のことなど案山子はお見通しで、きっかけを作ってくれたのだろう。
今回ばかりは、そんな案山子に素直に感謝するしか、ない。

が、それにしてもナルトは怒って飛び出していったはずで・・・。
そんな佐助の前に、ナルトは笑顔で茶碗を差し出してきた。

「美味しそうだってばよ♪はい、佐助っ」

「サ、サンキュ・・・」

それを受け取りながら、佐助は思わずじっとナルトを見つめる。
ナルトはそんな佐助の視線に気付き、照れくさそうに「へへっ」と笑った。



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