小説(long2)
□ハルカ、カナタ 第5章
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第5章-1
「・・・け、・・・佐助?」
その声に名を呼ばれゆっくりと瞼を上げると、ぼんやりと金色のふわふわしたものが見えた。
「あ、佐助っ。起きたってば?」
そして、自分の好きな青い瞳が心配そうに自分を覗き込んでいることに気付いて。
そっと手を伸ばして、その頬を優しく撫でる。
「鳴、門・・・?」
「んっ、佐助ってば、大丈夫?」
どこか幼く見える表情で、鳴門はそう尋ねてくる。
まだ、霧がかかったような思考のまま、その身体を引き寄せて、腕の中に囲う。
何故か、小さく感じる、それ。
違和感を感じつつも、その愛おしい温もりと匂いに、思わずギュッと強く抱きしめて。
とても、嫌な夢を見た気がした。
思い出そうとするだけで、胸が苦しくなるような・・・。
「さ、佐助っ・・・」
僅かに身を捩る鳴門を布団に押さえつけて、その額に優しく口付ければビクリと震える身体。
「な、に・・・?」
怯えたような、声。
安心させたくて、そして、自分も安心したくて、佐助は夢中で口付けた。
温かくて、柔らかい・・・。
けれど、いつもなら直ぐに自分を受け入れてくれるはずの鳴門の唇は頑なに閉じられたままで。
「んっ、・・・っ、やっ・・・っ!」
逃れようとする唇。
それを追いながら、その柔らかな頬に手を当てて、顎を上げさせる。
「鳴門・・・」
出来るだけ優しくそう囁いて、再び口付けを落とす。
「っ・・・、んっ、んーっ・・・っ」
けれど、嫌々と首を振られ、腕を強く突っ張られて。
思わずその腕を掴んで、頭上にまとめて縫い付けた。
それを見下ろして・・・。
「・・・?」
涙に濡れた青い瞳は自分のよく知ったそれ・・・。
けれど、とにかく何もかもが小さく感じた。
腕も、こんなに細かっただろうか・・・。
両手首を合わせても、片手で簡単に押さえつけることができて・・・。
それに、視界の中に見慣れないものがることにも気付いた。
頬にある痣・・・。こんなもの、鳴門にはなかった。それに、・・・。
金色の髪の間から、覗くもの・・・。
ヘタリと力なく垂れ下がったそれは、一体、何だ・・・?
そこまでゆるゆると思考を巡らしていた佐助は、次の瞬間ガバッと勢いよく身を起こした。
僅かな眩暈を感じつつも一気に目が覚めて、咄嗟に鳴門を、いや、ナルトを見下ろす。
ナルトは怯えたように身体を震わせ、涙で濡れた青い瞳で自分を見つめていた。
「わ、悪い・・・。あの・・・」
思わず手を伸ばして、鳴門だと勘違いしたのだと言いそうになって慌てて思い留まった。
ナルトは自分と鳴門の関係など知らないのだ。
そんなことを言えば、余計にナルトが混乱してしまうに違いない・・・。
そう考えて、思わず自嘲してしまう。
(混乱しているのは、俺だ・・・)
どうしても、ナルトに鳴門を重ねてしまう。
違うのに、・・・。
ナルトは自分の鳴門ではないのだ。
夢なんかじゃ、なく。
全てが現実−−−。
鳴門はもう、いない・・・。
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