小説(long2)

□ハルカ、カナタ 第3章
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第3章-2


「あれ?やっぱ、起きてんの?」

音もなく襖が開き、案山子の顔が覗く。

「あぁ・・・」

佐助は小さく答え、傍らで僅かな寝息を立てているナルトを見やってから、ゆっくりと顔を上げる。
窓の外は既に闇。
ナルトはあの後、そのまま眠りについてしまった。

「お前も少しは休んだらどうだ?」

案山子は疲労の色が色濃く滲む佐助の顔を見て、さすがに眉を顰める。

「あぁ、わかって、る・・・」

佐助とて、一緒に休むつもりでいたのだ。
さすがに自分自身、かなり疲れていることは自覚していた。
けれど、・・・。

「ま、無理もないけどねぇ」

案山子はそう言って佐助の隣にゆっくりと腰を下ろすと、手にしていた一升瓶を佐助の目の前に翳
す。

「久しぶりの再会だし、ちょっと飲もうや」

佐助はそんな案山子をじろっと見やう。

「俺はまだ、19だ・・・」

「んー、知ってる。でも、飲めるでしょ?少し付き合ってよ」

悪びれもなくそう言った案山子に、佐助は溜息をつきつつも手を伸ばす。
実際、酒を飲むのは初めてではない。
大学に入り、一人暮らしを始めた佐助の部屋の冷蔵庫には、ビールなら常備している位だ。

そんなこともお見通しなのかと、佐助は眉を顰めつつ案山子の手からをれを受け取り、コップはど
こだと視線で告げる。

「はいはい。これ、ね。あら?佐助が注いでくれるの?嬉しいねぇ」

そんな案山子のからかいを無視して、佐助は差し出された2つのコップにトクトクと酒を注ぐ。
二人して無言のままそれに手を伸ばし、案山子が無理やりカチンとコップを合わせてから、二人で
同時にそれを呷る。

「ぐっ、・・・っ」

思わず咽そうになった佐助に、案山子もようやく表情を和らげる。

「まーだ、早かったかなぁ?やっぱ、学生さんはビールとかの方がいい?」

「うるせー、よっ」

佐助はそう吐き捨て、眉を顰めつつももう一度それを口にする。
キリリとした辛口のそれは佐助の好みではあったが、かなりアルコールは強そうだった。

「ま、ゆっくり飲めよぉ」

案山子はそう言って、自分はくいっとコップを傾け、満足気にゴクリと喉を鳴らす。

「何だかナァ。お前とこうやって酒が飲めるなんて、変な感じだよ」

もう、あれから三年か・・・。
そう呟いた案山子に、佐助が視線を向ける。

「あんた、他にも何か、知ってんだろ・・・」

そう言った佐助に、案山子は少し驚いて顔を上げる。

「そのために、あの時『家に来い』って言ったんじゃないのか?」

案山子は首を竦める。

「意外と冷静じゃない。うーん、まぁ、そうだったんだけど、さ・・・」

「話せ、よ・・・」

佐助は両手でコップをギュッと掴み、それを見つめている。
案山子は僅かに息を吐く。

「その前に、さ。お前、あの話知ってたのか?」

「あの話って、何だ?」

本当は案山子が何を言おうとしているのか予測は出来た。けれど、佐助はわざと惚けた。

「九尾が最初は赤子の臍に封印されたって、話だよ」

佐助はやはり、と思いつつ、ゆっくりと顔を上げ、「あぁ・・・」と答える。

「もしかして、伊館?」

案山子の問いに、佐助は頷く。

「あんたも、知ってたんだろ・・・?」

一体、あんたはどこまで知ってるんだ?
佐助はそう言って、案山子を見やう。
案山子は僅かに笑った。



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