小説(long2)

□ハルカ、カナタ 第3章
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第3章-1


「サスケぇっ・・・っ!!」

再び、大声とともに背中にドシンと何かが乗っかってきた衝撃。

「なっ、何だっ?!」

驚いて振り返った佐助の目に、金色の何かがふわふわと揺れているのが映った。

「サスケだってばっ!サスケだってばよぉっ!!」

その物体は覚えのある声でそう叫びながら、恐らく佐助の背中にしがみつき、その金色の何かを
ぶんぶんと振っている。
いや、振ってはいるが・・・。
それが一つでないことに、佐助は気付いた。

「よ、よかったってばよぉっ。俺ってば、何か変になってて・・・。んでもって、何か知らない場所
だしっ。もう、訳わかんなくってっ・・・っ」

そう言って、小さな手が佐助の肩をギュッと掴む。
そしてひょっこりと見えた小さな頭・・・。
金色の、髪・・・。
佐助は思わずその物体を背中から引き摺り下ろす。
小さな・・・。

「・・・っ?!」

佐助は愕然と、それを見下ろす。
地面にペタリと座り込んでいるそれは、濡れた青い瞳で佐助を見上げぐずっと鼻を啜る。

「鳴、門・・・?」

思わず呟くが、直ぐに首を振る。
確かに、似ている。
丁度初めて会ったあの頃の鳴門、に・・・。
けれど。


金色の頭には同じく金色の、2つの大きな、耳・・・?
小さな身体にはだぼだぼのオレンジ色をしたジャージのようなものを着ているが、その後ろには
ふわりと軽そうな幾つもの、これまた金色の、尻尾・・・?が溢れ出し、揺れている。

「サス、ケ・・・?」

心配そうに自分を見つめ、その名を呼ぶ顔はやはり、幼い頃の鳴門・・・。
ただ、両頬にはそれぞれ髭?のような線状の痣が三本づつ入っている。

(これって、・・・。いや、そんなこと・・・)

思わず思い浮かべたものを、佐助は自ら否定する。

「何か、サスケってば、また大きくなってるって、ば・・・?気のせい、かな・・・?でも、・・・お前っ
てば、何、その格好・・・。今度はずいぶん・・・」

まともだって、ば・・・。
佐助はそう言われ、何となく自分自身を確かめてみた。
案山子にも言われたが、身長は確かに村を出手からも少しは伸びた。
服装は、普段と変わらないシャツにジーンズという何の変哲もないもので・・・。
と、そんなことを確認している自分に、思わず大きな溜息を付いた。

(そうだ、落ち着け・・・。って、・・・。落ち着いていられるかっ?!)

こんな状況で平気でいられる訳が、ない。
佐助は再び恐る恐るそれを見下ろした。

(もしかしたら、目の錯覚とか・・・)

けれど、そこには相変らず何本もの金色の尻尾がゆらゆらと揺れていて。
佐助は大きく息を吐き、じゃがみこんでそれに手を伸ばす。

(触ろうとすれば、消えるもんだよな・・・)

が、しっかりと感じた、柔らかなその毛の感触。
思わず頭の上の耳にも触れてみる。同じような手触りで、さらに温かくてふよふよしている、それ。
佐助はガックリと肩を落とした。

「お、俺だって驚いてるんだってばっ!気がついたらこんなちっこくなってて、耳と尻尾が生えて
たんだってばよぉっ・・・」

頬を膨らませてそう言った顔に、佐助は信じられない思い出小さく呟いた。

「お前、本当に鳴門、か・・・?」

俺の、・・・。

「そうだってばっ。俺ってばっ、サスケをっ・・・」

その小さな両手が伸び、佐助の胸元をギュッと掴む。

「捕まえたってばよっ。今度はっ、逃がさないってばっ!」



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