小説(long2)

□ハルカ、カナタ
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□□ ハルカ、カナタ □□

プロローグ



「サスケの目撃情報?!」

ナルトはベッドの上、思わず身を乗り出す。
そんなナルトを押さえ込みながら、サクラは呟く。

「さっき、綱手様のところに伝書が届いたの。水の国の国境付近らしいわ」

「じゃあっ、急いで行かねぇとっ!今度こそ、逃がさないってばよ・・・っ!」

そう言って慌しく駆け出そうとするナルトの腕をサクラの両腕がガシッと掴み、身体ごとベッドに
引き戻される。そして、再びものすごい怪力で押さえつけれられて。

「サクラちゃんっ?!離してってばよっ!!」

暴れるナルトに、サクラはゆっくりと首を振る。

「あたし達、今回は“待機”ですって。まだ、確実な情報じゃないし、あんたもそんな身体じゃ
どうしようもないでしょう?」

冷静にそう言うサクラ。
そんなサクラを信じられない、といった風に見つめながら、ナルトはギュッと唇を噛み締める。
それを受け止めつつ、サクラは小さく息を吐く。

(やっぱり、言わなきゃよかったわ・・・)

予想以上の反応に、サクラはナルトに伝えてしまったことを後悔する。
けれど、サクラとて落ち着いてはいられなかったのだ。
この思いを分かち合えるのは、ナルトしかいないから・・・。


先日、サクラたちは天地橋任務から戻ってきたばかりだ。
二年半ぶりのサスケとの再会。けれど、サスケはかつてのサスケとは違っていて、本気で自分達を
襲ってきた。
そして自分達はそのサスケに、全く歯が立たなかった。

結局、あっさりち逃げられてしまい、己の非力さを感じながら里に戻ってきた。
特にナルトは、“九尾化”したことによるダメージも引き摺っていたらしく、里に到着した途端、
倒れこんでしまった。

サクラは自分の腕をそっと見やう。
既に傷は完全に塞がったけれど、未だピリピリとした痛みが残っている。
ほんの少し九尾のチャクラに触れただけで、これだ。
それを全身に纏ったナルトのダメージは計り知れない。
表面的には完全に治癒できていたように見えていたのだが、やはり相当のダメージが身体に残って
いたのだ。

そんなナルトを突き動かしていたのは、『サスケを取り戻す!』という強い思い。
けれど結局、その思いは届かなくて。
ナルトのことだ。きっと誰よりも、自分の無力さを責め、悔やんでいたのだろう。
身体だけでなく、精神的なダメージも合わさって、一気に疲れが出たのだ。


「新しい情報が入ったら、・・・もし、本当にサスケくんだったら、綱手様も直ぐに連絡をくれるって
言ってたわ。だから、あんたはとにかく、自分の身体を治すことに専念しなさい」

次は絶対に、取り戻さなくちゃ。
サクラの言葉に、ナルトはぐっと息を飲む。

そう、もう余り時間は、ない。
大蛇丸が再び転生の儀を行うには、三年ほどの年月を要すると聞いている。
けれど、サスケが大蛇丸の元に行ってしまってから既に二年半・・・。


「ちくしょうっ・・・」

思わず、ナルトは吐き出す。
そんなナルトに、サクラは視線を伏せる。

「悔しいのは、あたしだって同じ。でも、今のままじゃ、サスケくんには敵わない・・・」

見せ付けられた力の差。
サスケを取り戻すためには、もっと強くならなきゃいけない。
それに、・・・。

「失敗はもう、許されないわ・・・。次の次は、ないのよ・・・っ」

サクラは搾り出すように、言う。



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