小説(long2)

□一片に、舞う 最終章
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最終章-1


『姉様へ

姉様、お元気でしょうか?遠く離れ離れになってから、もうどれ位経つのかな。でも、鏡を覗けば
そこには姉様がちゃんと近くにいる気がして、私は寂しくなんてなかったよ。どんなに遠く離れ
ていても、私たちはいつも一緒。ずっと、そう思ってきたもの。

でも、姉様がこの手紙を読んでいる頃には、きっと私はこの世にはいません。でも、悲しんだり
しないでね。私が自分で決めたこと。私は自分の人生に、後悔なんてしていないもの。

色んなことがあったけれど、もちろん、辛いこともあったけれど、でも、精一杯生きてきたから。
だから、胸を張って言えるの。あたしは、幸せだった。とっても、とっても、幸せだった。

今になって、昔、おばあ様が言ってた言葉の意味が、わかる気がしてる。
美しいものは、やがては、散る。一斉に咲いた花も、一片ずつ、散っていく。それが運命なんだ
って。だから、一生懸命、生きなきゃいけないんだって。
そうなのかも、しれない。どんなにずっと一緒にいたくても、最後は、一人・・・。

でも、でもね。それって、やっぱり悲しいことではないと思うの。一生懸命生きたから、大切なも
のが出来た。大切で、大切で、どんなことがあっても守りたいもの。だからこそ、それを守るため
に、自分の成すべきことをするだけ。
それって、悲しいことなんかじゃなくて、とっても幸せで、誇らしいことだと思うの。


あぁ、もう時間が余りありません。姉様には、もっとたくさん話したいことがあったけれど、我が
侭かもしれないけれど、最後に私のお願いを聞いて欲しいのです。


九尾っていう化け物が、今、木の葉に迫ってきています。ミナトは火影として、里を救うために
戦おうとしています。けれど、とても人の力では叶わぬものなのだと、私たちは知っているよね。
何度も、聞かされた。尾獣という存在が、どんなに恐ろしいものなのか。

でも、渦の国には、それから人々を守る力が、ある。それが、“巫女の力”。姉様が受け継いだ
力。けれど、黙っていたけれど、私にも少しだけ、その力があります。
きっと、双子だから、かな。僅かだけれど、自分の中にそれがあると、随分と前に、気付いていま
した。でも、それが何かの役に立つなんて、思ってもみなかった。

姉様のように、完璧なものではないけれど、きっと、ミナトの役に立てると思います。木の葉に
来る時、父様から一本の巻物をいただきました。その巻物には、渦の国に伝わる禁術が記されて
いました。
とても難しいものだけれど、ミナトなら使える。そして、私の僅かな力を合わせれば、九尾の陽の
チャクラのみを残して、陰のチャクラのみを封印できる。

その術を使えば、私もミナトも、唯では済まないでしょう。でも、それで九尾が倒せるなら、里を
守れるのなら、私たちは本望です。
でも、同時に、私たちは大きな罪を犯します。
私たちは、生まれたばかりの子に、ナルトに九尾を封印、します。

それが親として、どんなに酷いことなのか、十分にわかっているつもりです。でも、勝手かもしれ
ないけれど、私たちはこの子を誰よりも愛しているし、信じてます。

私たちの子だから。きっと、強い子のはず。九尾になんて、負けたりしないっ。

それに、きっと、一人じゃないもの。カカシや三代目のじい様、自来也様がきっと支えてくれる。
この子はそれを、ちゃんとわかってくれると思う。

でも、できれば、もっといっぱいいっぱい、愛情を注いであげたかったな。だって、すごく楽しみ
にしてたんだもの。あたしとミナトの子だから、きっといい男に育つはずよ!

けれど、もし、もしもね、この子が九尾のことで辛い思いをしていたら、姉様、どうか、お願いで
す。ナルトに力を、貸してあげてください。どうか、私の代わりに、ナルトを見守ってやってくだ
さい。
勝手なお願いだということは、十分に承知しています。でも、これは姉様にしか頼めない。
どうか、お願いします。
最後まで、勝手な妹でごめんね。


大好きなクシナ姉様へ。


妹クシナより』



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