小説(long2)
□一片に、舞う 第9章
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第9章-2
シカマルは、ようやくナルトの口から手を離す。
ナルトもさすがに気が付いたのか、そのまま黙ってカカシを見つめる。
カカシは、うずまきクシナと面識があるのだ。もちろん、巫女が本当にうずまきクシナであれば、
カカシを知らぬはずはない。
だからこそ、カカシ達が現れてから、誰もカカシの名を口にしなかったのだ。
彼女の反応を、窺うために。
そして巫女は、カカシに気付いた。その名を口にし、した。
けれど、カカシの表情はどこか悲しそうで・・・。
巫女もその名を口にはしたが、直ぐに視線を逸らし、そのまま俯いてしまった。
「カカシ、先生・・・?」
さすがに沈黙に耐えかねてか、ナルトが口を開く。そんなナルトに、カカシは視線を向け、僅か
に笑みを漏らす。
「あの人も、・・・歳を取っても、こんな風にきれいなまま、だったんだろうな・・・。お前に似て、
騒がしい人だったけど、確かにきれいな人、だったんだよ。ホント、もったいないよなぁ・・・」
こんな風にしとやかだったら、先生も大変だっただろうにね。ライバルがいっぱいでさ。
カカシはそう言って、巫女の傍らに膝をつく。
「でも、やっぱりあの人はあの人だよ。きっと、変わらない。あなたも、そう、思いませんか?」
カカシの言葉に、巫女の身体がビクリと震える。
シカマルもナルトも、ただ呆然とそんな二人を見ていた。
「どこが、・・・そんなに、違いますか・・・?」
巫女は俯いたまま、震える声でそう、小さく呟く。
「いえ・・・。見た目はホント、そっくりで。俺も驚きました。でも・・・」
カカシは目を細める。そして何かを思い出したのか、一人でクスクスと笑う。
「あの人が俺と久しぶりに会って、一発や二発、ど突かない訳ないんですよ。口より先に手が出る
人でねぇ。それでもってきっと、『何、無視してんだ』とか、『挨拶はどうした』とか、怒ってた
と思います。ホント、ギャーギャーとよく、喚く人でしたから・・・」
カカシはそう言うと、はぁ、と大きな溜息をつく。
顔を上げた巫女は、少し困ったような表情を浮かべつつも、「そう、でしょうね・・・」と小さく呟く。
「あの子だったら、きっと、・・・。えぇ、きっと、そうなんでしょう・・・」
「わかっていたのに、どうして演技でも何でもしなかったんですか?その容姿なら、いくらでも俺
を騙せたはずでしょう?俺の名前を知っていたくらいだ。きっと、あの人から何かを聞いていたは
ずだ」
巫女はゆっくりと首を振る。
「私は、あの子にはなれません。それに、あなたを騙せるとは、思わなかった・・・」
そう言って、ゆっくりとカカシを見つめ、僅かに笑みを漏らす。
「えーと、スンマセン・・・」
二人のやり取りを聞いていたシカマルが、申し訳なさそうに口を挟む。
「確認、してもいいっすかね?つまり、巫女さんは、ナルトの母親のうずまきクシナじゃないっつ
うことでいいんすか、ね?で、となると、そちらさんは、誰なのかなぁ、なんて」
至極真っ当な問いだったが、カカシは「へっ?」と不思議そうな顔をしてくる。
そして、再びチラリと巫女を見やってから、
「そ、だね。残念だけど、ナルトの母親とは別人。でも、誰って言われても・・・。あー、あの人と
はどんなご関係で?」
などと聞いている。
(おいおい・・・)
思わずシカマルはがっくりと項垂れる。
その隣りでは、ナルトも緊張の糸が切れたのか、ぐったりと地面に突っ伏した。
「おい、ナルト。大丈夫か?」
シカマルはやや心配になって、ナルトの肩に手を乗せる。
もしかしたら、かなりショックを受けているのではないかと思ったのだ。
母親が生きているかもしれないと聞かされて、嬉しくなかったはずは、ない。きっと、どこかで
期待もしていただろう。
そんなナルトには、酷なことだ。
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