小説(long2)

□一片に、舞う 第9章
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第9章-1


サスケ達はあっという間に姿を消した。
水月は気が抜けたのか、そのまま大の字になり、直ぐに寝入ってしまった。
シカマルはナルトに巫女の様子を看るよう告げてから、自分は芹名の傍らに跪き、その怪我の手当
てを始める。

芹名の傷はそれほど深いものではなかったが、血が止まらない。恐らく、そういった類の薬が
傷を負わせた武器か何かに塗られていたのだろう。
それでも、備えていた止血剤で何とかなりそうだった。
それは、怪我の多いナルトを心配したサクラが持たせてくれたものだ。

「ぐっ・・・」

それを擦りつけた途端、芹名は顔を顰める。

「やっぱ、相当沁みるか・・・。まぁ、うちの優秀な医療忍者の特別配合薬だから、効き目は保障
できるんだが・・・」

匂いからして、かなり刺激が強そう、だ。
サクラの薬はいつも、ある意味パンチが効いているのだ。いや、確かによく効くのだが、効く前
に死ぬんじゃないかと思うこともしばしば・・・。
だが、サクラ本人にそれを言える勇気のあるヤツは、今の木の葉にはいない。
でもまぁ、サクラの気持ちがこもっていると思えば、ありがたく使わせてもらうしかないのだが・・・。


シカマルが何とか包帯を巻き終えると、芹名は眉を顰めつつも、申し訳なさそうに頭を下げた。
そして、ゆっくりと顔を上げると、シカマル越しにそっとナルトを見つめる。

「あぁ、初めだったな・・・。あれが、うずまきナルトだ」

そう言ったシカマルに、芹名はただ頷く。

「おい、ナルト。そっちはどうだ?」

シカマルは振り返り、ナルトを見やう。

「ん、今は気を失ってるだけだってば。でも、・・・随分弱っているみたいだってばよ」

怪我はなかったが、顔色が余り良くない。呼吸も浅く、頻脈だ。
ナルトは指でそっと顔に掛かった長い赤茶色の髪を払う。
その様子を見ていたシカマルは、立ち上がり、ナルトの正面に座り込む。

「俺には、応急処置的にチャクラを活発化させることくらいしか出来ねぇんだが・・・。それもちょっ
と厳しそうだな」

チャクラを活発化させることで、一時的に体力を回復させることができる。しかし、それは急激な
エネルギーを要するため、後の反動も大きい。それに耐えうる基礎体力が必要なのだ。

「お前のチャクラ、使ってみるか・・・」

シカマルはそう言って、ナルトを見やう。
チャクラ性質が似ている場合、他人とでも比較的容易にチャクラを融合させることができる。
それを応用すれば、ナルトのチャクラを巫女の身体へと移すことができるはずだ。
もちろん、チャクラ性質が合うことが前提だし、そもそもこれは尋常でない量のチャクラを持つ
ナルトだからこそ、出来る事だ。

ナルトはコクンと頷き、そっと手を差し出してくる。
その手を取って、シカマルは横たわる巫女の腹部に当てる。そのまま何となく、二人を交互に見
やう。

「確かに、似ているような気がしないでもないが、・・・俺にはよくわかんねぇな。ナルト、お前は
どう思う?」

何か、感じるか?
シカマルにそう問われても、ナルトは困った顔で、ゆるゆると首を横に振る。

「俺にも、わかんねぇって、ば・・・。自分じゃ、似てるのかどうかも、わかんないし。母ちゃんって、
どんな感じなのかも、よくわかんないんだってばよ・・・」

「そっか、・・・そ、だな・・・」

シカマルは俯き、「悪い・・・」と小さく呟く。

「気にすんなってば。俺もさ、会えば何となくわかるかなぁ、なんて思ってたってばよ。でも、・・・」

正直、何も感じない・・・。
もしかしたら、自分はこの人の、今手を当てているそこにいたかもしれないのに。
もし、本当にこの人が母親だったならば、・・・



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