小説(long2)

□一片に、舞う 第8章
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第8章-2


ぐったりと横たわる二人に、時谷は駆け寄る。

「生きてっから・・・。まぁ、俺様がいてよかったじゃねーか・・・」

水月はそう言って笑みを浮かべたが、直ぐに顔を顰める。

「悪りぃ、サスケ・・・。手、出しちまった・・・」

これで、カブトには自分達の存在がバレてしまっただろう。けれど、放っておくことが出来なかっ
たのだ。

水月が教団に辿り着いた時には既に、そこはカブトの支配下にあった。
信者達は建物の一室に閉じ込められ、カブトの手下らしき忍がうろうろと俳諧していた。
彼らがまともでないことは、一目見てわかった。
ここまで追ってきた者達同様、どこか虚ろな目をした彼らは恐らく、元音の忍。
カブトは行き場のない残った忍達をモルモットのように人体実験を繰り返していたのだ。
自我をも奪い、自分に従順な僕として使うために。

さらに、彼らの目をかいくぐり、地下洞窟へと潜入した水月の前には無残な光景があった。
そこには至るところに亡骸が転がっていた。
それは忍だけのものではなかった。明らかに、信者、つまり民間人のものを含まれていたのだ。
どれも無残なまでに引き裂かれ、食いちぎられたような痕があった。

さすがの水月も、思わず片手で目を覆った。
自分も残虐な殺し方を好んできた。けれど、言い訳かもしれないが、それはあくまで忍同士の戦い
において、だ。

弱い者は殺され、強い者が生き残る。
忍の戦いとは、そういうものだ。お互い、それを覚悟の上で戦っている。

水月には水月の、忍としてのプライドがある。
勝手かもしれないが、それが水月の忍としての在り方だった。

憤りを抑えつつ、ようやくカブトを見つけたのは地下洞窟の広い一室だった。
僅かな灯りがゆらゆらと揺れる中、カブトは笑みを浮かべて最奥の座に座っていた。
そして、その前には一人の女が結界の中で倒れていた。


「命懸けの結界とは、・・・なかなかあなたも執念深いなぁ」

そう低く呟いたカブトの足元には、血まみれの男。

「死んでも尚、解けない結界、ね。残りのチャクラ全てを結界に注ぎ込んだ訳だ。すごいねぇ。
僕もそれぐらいの忠誠を尽くす部下が欲しいくらいだよ」

カブトは徐に立ち上がり、足元のそれをぐしゃりと踏みつけた。

「でも、大したチャクラは残っていなかったみたいだから、もって半日、かな。どうします?あな
たの今の体力では動くこともままならないでしょう・・・?」

そう言って近づくカブトに、倒れていた女が僅かに身を起こす。
その顔を見て、水月は思わず息を飲んだ。
長い赤毛の髪に、栗色の瞳・・・。しかし、・・・
似てる、と思った。確かにあの、うずまきナルトに−−−。

「さて、考える時間には丁度いいかな?安心するといい。あなたさえ協力してくえれば、寿命まで
は生きながらえますよ」

けれど、そうは長くもたないでしょうけどねぇ。
そう言ったカブトに、女はふいッと横を向く。

「その強気・・・、いつまでもつことやら・・・」

カブトはニヤリと笑い、眼鏡を指先でくっと上げてから、踵を返し、元いた場所に戻っていく。

(マジかよ、ちくしょうっ・・・。サスケっ、どうすんだっ)

焦る水月を他所に、時間だけが刻々と過ぎていった。



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