小説(long)

□一片に、舞う 第6章
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第6章-2


一夜明け、シカマルは重い頭を片手で支えながらテマリの後を歩く。

「余り寝ていないようだな」

テマリは振り向きはしなかったが、恐らく心配しているのだろう。
そう言って、中庭が見えた辺りで一旦立ち止まる。その先には風影との謁見室がある。

「そうでもねぇよ。美味い飯も食えたし、短時間は爆睡したしな。十分、休養にはなったさ」

シカマルはそう言って僅かに笑う。
感謝は、していたのだ。何だかんだと言いつつも、シカマルは手厚いもてなしを受けている。
出された食事は豪華だったし、熱い湯にも浸れた。
まぁ、一番嬉しかったのは、久しぶりの布団の温もりだったが・・・。

だが、それでも早々に目が覚めてしまったのも事実。
少しでも眠れれば良い案でも浮かぶと思ったが、特に妙案が浮かんだ訳ではない。もちろん、
木の葉からの連絡はまだ届かず、手持ちの駒が増えた訳でもないのだ。

しかし、木の葉の者が出てくれば相手もももう少し手の内を見せるだろうというのが、我愛羅た
ちの考えだ。
それには、シカマルも納得している。

相手もあれだけの説明でナルトを連れて行けるとは思っていないだろう。
砂と木の葉は確かに同盟を結んではいるが、そこは忍の世界。
相手も忍であるならば、それなりに警戒していたはず・・・。

実際、核心に触れるような情報を提示しておきながら、その詳細は一切語っていない。
あんな風に言われれば、必ず砂は木の葉にそれを伝え、何かしらの手を打ってくるだろうと予測
していたことだろう。
それはつまり、木の葉の代表であるシカマルが出向けば、それなりの話をする準備はあるという
ことでもある。

しかし、わかってはいても、相手の思惑通りに動くことは危険を伴う。
交渉ごとは主導権を握った方が、明らかに有利なのだ。
今の状況では、明らかに向こうがそれを握っている・・・。
それをどうやってこちら側に奪うかが、目下、シカマルに与えられた課題だった。


「何とか、なりそうか・・・?」

テマリの思考パターンはシカマルに似ている。恐らく、その辺りはテマリも考えているのだろう。
シカマルは、「まぁ、な・・・」と、とりあえず返す。
手がない訳では、ない。
ただ、それをどう使うか、だ。

テマリはそれでも少し安心したように頷くと、再び歩き出す。
風影謁見室は純和風の座敷だ。
その前までくるとテマリは廊下に片膝を付き、中に一声掛けてからゆっくりとその襖を引く。


その直ぐ脇には既に、例の二人が姿勢を正し座っていた。
シカマルは促されるまま、その二人の正面に腰を下ろす。
視線だけ動かせば、奥の一段高い座には我愛羅が座り、手前にはカンクロウが控えている。
普段は掛けられているだろう御簾が上げられているのは、同盟国の代表としてあるシカマルを認
めている証であり、さらには今回の件に対して風影である我愛羅自身が積極的に関与するという
意志を表したものだろう。

シカマルは一旦、我愛羅のほうに身体を向け、深く頭を下げる。
木の葉としても、同盟国として砂を信頼し、この場を預ける旨を示す意味合いだ。
我愛羅はそれを見止め、口を開く。

「先だっての話の内容は、ここにいる木の葉の代表、奈良シカマルに全て伝えた。余計な説明は
不要。有意義な話し合いを臨む」

その言葉を以って、シカマルは再び二人に向き合う。


「木の葉の奈良、シカマルだ」

シカマルはそう言って、二人をゆっくりと見やう。

「芹名、と申します。こちらは我が弟子の時谷・・・」

そう言って、二人は同時に頭を下げる。

「我らのために時間を割いて頂き、感謝しております。風影殿のご好意に関しても同様。どうか、
我らの申し出により良い返事を頂きたい」

さすがに年の功か、状況を冷静に判断し、端的に話を振ってくる。
シカマルは頭を下げたままの二人を交互に見やってから、小さく息を吐いた。



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