小説(long)

□一片に、舞う 第5章
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第5章-2


バタバタと慌しく幾人もの忍が駆けて行く。
それを横目で見やいながら、カカシはゆっくりとそこに向かっていた。

「懐かしいなぁ・・・。あぁ、あの柱の傷は一昨年のぉ・・・♪」

「ちょっと、先生っ!年寄りくさいですよっ。それに何っ?柱の傷なんてどこにあるんですっ?!」

「ガーン・・・、サクラ、“せいくらべ”知らないの?」

知りません。
隣を歩くサクラが顔を引き攣らせ、大きな溜息をつく。


「えー、だって、かれこれ一年ぶりなんだよ。んー、何かこの服もきつくって・・・。太ったのか
なぁ。やっばり運動不足、なんだよねぇ・・・」

カカシはそう言いながら、忍服の上着の首の辺りをくいっと引っ張る。

「そう、ですね。ちょっと、太ったんじゃないですか?お腹、弛んでません?」

「うそっ、ヤバイなぁ。こんなんじゃ女の子に見せ、っげふっ・・・」

サクラの鉄拳が腹に打ち込まれ、カカシは思わず前屈みになる。

「ちょっ、酷いよサクラー」

涙目で顔を上げるカカシに、サクラはにっこりと笑う。

「あら、ちゃんと鍛えてるじゃないですか。それに、・・・」

忍服、似合ってますよ。
そう言ったサクラに、カカシは少し照れたように笑う。


サクラは決してお世辞を言った訳ではない。カカシは未だリハビリ中の身だが、こっそり修行を
始めているのを知っている。
担当医としては文句の一つも言ってやりたいところだが、それがカカシの忍としてのプライドだと
知っているからこそ、サクラは見て見ぬ振りをしているのだ。

普段、やる気がなさそうに見えるが、カカシは“忍”であることに人一倍、誇りを持っている。
意外と努力家だし、負けず嫌いだ。
皆が里の復興のために忙しなく動き回っているのを見て、何も出来ない自分に苛立ちを感じていた
のも知ってる。
だから、カカシがこんな風に笑ってくれるのは、サクラも嬉しい。
けれど、・・・。

二人が向かっているのは火影室だ。
昨晩、急遽綱手からサクラに召集がかかった。そして、そこに何故かカカシも呼ばれたのだ。
そのことに、サクラは若干の不安を感じていた。

綱手からの呼び出し、それも火影室への召集は、明らかに任務が命じられる場合だ。
しかし、カカシの正式な任務復帰は、まだ先のはず。
それは、先日サクラ自身がカカシの経過報告をした際に、綱手がそう判断したこと、だ。

それなのに、何故?


「ナルト達に、何かあったのかもしれないな・・・」

そう、呟いたのはカカシだった。
恐らく、サクラの表情から、何を考えているのか察したのだろう。
先ほどまでの緩んだ雰囲気とは異なり、カカシは真っ直ぐにサクラを見る。

「俺が呼ばれたってことは、その可能性が大きい」

カカシの言葉に、サクラは黙ったまま頷く。

ナルト達が中忍試験に向かって既に半月。
ナルトが第二次試験を突破したことは、綱手から聞いていた。
そのことはもちろん、カカシにも報告済み、だ。

まぁ、何だかんだと言いながらも、ナルトの実力を信じて疑わない二人にとってみれば、大した
ことではなかった。
そして、最終試験は個人戦。ここまでくればナルトの中忍試験合格は手堅いだろうし、あとはサスケ
との再会も果たしたナルトが笑顔で帰ってくるのを待つだけだと、話をしていたばかりだった。

しかし、ここにきて、カカシを含めての召集。
一体、何があったというのか・・・。



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