小説(long)

□一片に、舞う 第5章
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第5章-1


シカマルは木の葉への緊急伝令を飛ばすと、砂の里へと向かっていた。

(何が、起こってやがる・・・っ)

サスケ達の前では何とか冷静を装っていたシカマルだが、その心中は正直、穏やかではない。
さすがのシカマルも、今回の件にナルトの母親かもしれない人物が関わっているとは思っても
みなかったのだ。

里への伝令には、状況報告はもちろんのこと、とりあえず早急にナルトの母親について調査
して欲しい旨も付け加えた。
ナルトの母親、うずまきクシナが本当に生きている可能性があるのか−−−。
とにかく、その確証が欲しかった。


綱手の話では、うずまきクシナは木の葉に引き取られてから“忍”として育てられている。
忍であれば、その証である額当てを手にした時から、死んでそれを手放す時まで、どんな任務
に就き、その結果がどうであったかまで、里が詳細に記録しているはずだった。

特に、殉職時の記録は、徹底している。
忍の亡骸は、全て処分される。それは、その者が死んでも尚、その身体に刻まれた情報や術を
盗まれないために、必要なことでもあった。

けれど、額当てだけは唯一残され、形見として家族や縁者に返される。
その額当てには各人が識別できるナンバリングがされており、亡骸が判別できな時などは、
その回収をもって殉職と見なされるのだ。

また、それは任務外で死んだ場合、例えば病死した場合でも、同様だ。
一時でも忍として生きた者は、罪を犯した者でない限りは殉職扱いとなる。

よって、忍に墓はない。ただ、里の中心部にある慰霊碑に、その名が刻まれるだけだ。
犯罪者であれば、慰霊碑ではなく、犯罪者リストに名を連ねることになるだけ。
それが木の葉の、忍の掟だった。

しかし、シカマルの記憶では、慰霊碑に“うずまき”の姓を関する名前はなかった。
もちろん、犯罪者リストにも、だ。
よく考えれば、それはおかしなことだった。


確かに、波風ミナトが四代目火影になった頃には、大戦は終結に向かっていたはずだが、その
後も里内での混乱は続いていた。

その主となるものが、うちは一族によって企てられたと言われるクーデター。
それは里の上層部も絡み、里に不穏をもたらした。
最終的には初代火影とともに木の葉を創設したはずの“うちはマダラ”が現れ、そして、里に
“九尾”が召喚される・・・。そして、あの悲劇が、起こったのだ。

四代目が命を懸けて九尾を封印し、里を救ったことは確かに記録として残っている。
しかし、その最中にうずまきクシナが四代目の子を産み、そしてその直後に亡くなったこと、
また、四代目が九尾を封印した赤子が、その時生まれた二人の子であるナルトだということは
どこにも記載されていない。
恐らくは、何らかの理由に隠蔽されたのだろう。

当時のことをよく知っていたであろう三代目、そして四代目の師匠であった自来也辺りが生
きていれば詳しいことが聞けただろうが・・・。
二人とも既に、この世にはいない、のだ。


あと、可能性があるとすれば、・・・。

シカマルはその者の顔を思い浮かべる。
と言っても、常に顔の半分を口布で覆い、かつて写輪眼を備えていた左目は額当てで隠されて
いたため、その素顔はよく知らないが・・・。


そう、それは、“はたけカカシ”、だ。

彼は一年前、『暁』の一員であるペインが里を襲撃した際に、そのペインと戦い、重症を負った。
長く昏睡状態が続いていたが、半年程前にようやく目覚め、その後驚異的な生命力をもって
順調に回復していると聞く。
未だ、忍の任務からは外れ、リハビリに専念している生活だが、それはある意味丁度良かった
かもしれない。つまりは、確実に里にいるということだ。



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