小説(long)
□一片に、舞う 第3章
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第3章-2
テマリを筆頭に、我愛羅、シカマル、ナルトは地下牢へと続く階段を下りていく。
「捕まえるのに、多少手間取ってな。そいつは危険人物として最下層に閉じ込めている」
テマリの言葉に、シカマルは
「へぇ、お前が手こずるたぁ、あいつも大したもんだ」
などと、逆なでするようなことを口にする。
「相手をしたのは私じゃないっ、カンクロウだっ」
案の定、テマリはこめかみに血管を浮かび上がらせ、シカマルに向かってはき捨てる。
そんな二人をハラハラと見やいながらも、ナルトは煩いぐらいに高鳴る心臓を必死に押さえ込ん
でいた。
そこに、サスケがいる訳ではないけれど、・・・。
それでも、会えるかもしれない、という僅かな期待。
もちろん、喜んでばかりはいられないことは、わかっている。
ここに来るまでの間にシカマルからは一通りのことは聞いた。けれど、先にシカマルが言ってい
た通り、状況は余りにも不確定だ。
ナルト自身、そんな宗教が在ったことなど、初耳だった。
“尾獣”を崇拝しているという、それ。
人智を超えた強大な力を持つその存在は、多くの人々に畏怖を与える。
しかし、一方でそれに魅入られる者がいるのも確かだ。あの『暁』も、そうだった。
野望を抱く者にとってその力は魅力的なもの。
けれど、・・・。
ナルトは思う。
そんな力を手に入れたからといって、本当にこの世の全てを手に入れられる訳ではない。
力で無理やりねじ伏せたものなど、いつかは、その力によって壊れてしまう。
そんなものに、意味などない。
その先には、破滅しか、ない−−−。
それを望んでいるのならば、話は別かもしれないけれど。
けれど、そんなことを誰が望むだろうか。
力を誇示したいのならば、他者がいなければ、この世界がなければ意味がない。
人は一人では生きられない。
生きる意味が、ない。
だから、本当に何かを欲するのならば、“力”だけではダメなのだと思う。
自らも受け入れ、そして他者に受け入れられること。
信じて、信じられて。分かり合う、こと。
認め、認められ、初めて築かれるもの。
ナルトとて、ずっと強くなりたいと思ってきた。守りたいものを守れる“力”が欲しいと思ってきた。
けれど、生まれてからずっと、“九尾”という尾獣最強の力をこの身に宿して生きてきても尚、
それだけではダメなのだと思い知らされてきた。
尾獣を崇拝し、彼らは何を望んでいるのだろう。何を求めて、祈り続けているのだろうか。
自分達の幸せため?この世の平和のため?
シカマルの話では、その教団はつい最近出来たものではないという。
自分が生まれる前から、いや“九尾”がこの身に封印される前から存在していたことは、既に
確認されている。
それだけ長い間、彼らは目立つような動きはしていなかったはずなのに、今さら何を欲すると
言うのだろう。
やはり、尾獣の力を狙っているのだろうか。そうであれば、彼らの目的は一つしかない。
そう、自分の中の“九尾”。
既に、この世に彼らの崇拝する尾獣は“九尾”以外にはいないのだ−−−。
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