小説(long)

□一片に、舞う 第3章
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第3章-1


「おっしゃっ!木の葉丸ってば本選出場決まったってばよっ!」

二階席から試合を食い入るように見つめていたナルトが拳を振り上げ、大声で叫ぶ。

「これで木の葉は4人、本選出場か・・・?」

「ああっ、そうだってばよっ!って、・・・我愛羅っ!!」

ナルトは懐かしい声に振り返り、瞳を輝かす。

「久しぶりだな、ナルト」

そこには、相変らず大きな瓢箪を背負った五代目風影、我愛羅の姿があった。
里の長特有の笠や羽織は身に付けていないが、その威厳は全身から溢れ出ている。
それに、無表情なのは相変らずだったけれど、以前よりは数段柔らかいものになったようにナルト
には見えた。
そのことにホッとしながら、ナルトは我愛羅に微笑みかける。


「久しぶりだってば。我愛羅も元気にしてたみてぇだな」

「あぁ、・・・お前は?」

我愛羅の問いに、ナルトは胸を張ってみせる。

「俺ってば、この通りっ、元気だってばよ!」

「そうか、それは良かった」

我愛羅はそう言って、視線を下に向ける。ナルトがつられて視線を落とすと、試合を終えた木の葉丸
がナルト達に向かって両手を振っていた。
ナルトはそれに対して自分も両手をぶんぶん振って応える。

「お前も早々に本選出場を決めたな。少し、あっけなかったが・・・」

我愛羅はそんなナルトを横目で見やりながら、そう呟く。


ナルトは第一試合で既に本選出場を決めていた。
相手は岩隠れの忍だったが、ナルトの実力は知っていたのだろう。最初から大技を仕掛けてきた
ため、それをナルトが簡単に交してしまった時点であっけなく勝負はついてしまった。
正直この大会、ナルトと他の下忍達とでは力の差は歴然だった。

「お前には物足りないだろうな」

我愛羅の言葉に、ナルトは「そんなことないってばよ」と笑う。

「いろんなヤツがいて、びっくりするってば。まだまだ知らない術を使うヤツもいっぱいいるし、
気は抜いていられないってばよっ」

ナルトは嬉々として周りを見渡す。それは成長した外見とは相反して、とても子どもっぽく見える。
そんなナルトに、我愛羅は目を細める。

「お前は、本当に面白いな・・・」

「むうっ、面白いって、何だってばよぅ。ひどいってば・・・」

いや、褒めてるんだが、な。
我愛羅も、僅かに笑みを漏らした。


「んにしても、我愛羅。お前、そんな普通の格好で、こんなところうろちょろしてていいってば?」

ナルトは欄干に手をかけ、我愛羅を見やう。
主催国である砂の忍達は、いたるところで忙しそうに駆け回っている。
特に、会場の警備は異様な程厳しく、ピリピリした空気が漂っているのだ。

「テマリとカンクロウが仕切ってくれてるからな。予選では、俺には大した仕事はない」

本選ともなれば、諸外国の大名が視察を兼ねて訪れる。
その時には否応なく、自分は風影としての責務を果たさなければならない。

けれど、・・・。
我愛羅はナルトを見つめ返す。
我愛羅もただ、うろちょろしている訳ではない。
そう、今回最も警戒が必要なのは、このナルトなのだ。


既に、木の葉とは念入りな打ち合わせをしている。
一次・二次試験はマンセルによる行動であり、もともとそれぞれのチームに監視役も踏まえて
警護がつく。これは過去にあった“木の葉崩し”を経て、取り入れられたものだ。
しかし、個人戦に突入した今、参加者一人ひとりを常に監視下に置くのは難しい。

ナルトは何も知らずにこの中忍試験に参加しているため、あからさまな警護は付けられない。
それに、下手なことをすればナルトが怪しむ。
そのため、普段はシカマルが出来るだけ傍を離れないようにはしているが、他の参加者のことも
あり、四六時中というのは無理があった。よって、シカマルが離れざるを得ない時には、ナルトが
不審に思わない程度に、見知った誰かが傍に付くことになっていたのだ。



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