小説(long)

□一片に、舞う 第2章
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第2章-1


暗がりにピチャンと水音が響く。

「水月、か・・・」

サスケは僅かに顔を上げ、視線をそこに向ける。

徐々に溜まる水の塊がゆっくりと形を成し、それは徐々に水月の姿となる。

「ようっ、サスケ。遅くなっちまったな」

水月は首に手を当て、コキコキと音を立てながら頭を左右に振る。

「いや、別に構わない・・・。何か、わかったか?」

サスケは静かに問う。


「んあぁ、あいつらは相変らず目立った動きはしてねぇみたいだけどよ。ちょっと気になる情報
が入った」

水月はそう言いながら、ゆっくりとサスケに歩み寄る。
サスケは僅かに眉間に皺を寄せた。


サスケたちが、不審な宗教団体の存在を知ったのは三ヶ月程前のことだ。
初めは、ただの噂だと思っていた。
“尾獣”を信仰対象としているという、その集団。

これまで、そんな話は聞いたことがなかった。そのことが、逆に不自然でもあった。
サスケはあの『暁』にいたのだ。
“尾獣”に少しでも関わる情報ならば、『暁』は確実に手に入れていた。
それを、サスケが知らないはずがない。

それなのに、事実、その教団は存在していた。
それも、最近出来たばかりのものではなかったのだ。


“尾獣”に関わることであれば、放っておくことはできない・・・。
サスケはここしばらく、その教団のある村に香燐と重吾を潜入させ、情報を集めていた。

教団の設立は、どうやらサスケ達が生まれる前にあった大戦の終わり頃。
丁度、世界が混乱の最中にあり、不条理なこともまかり通ってしまっていた時代。そんな中で
彼らはこの世の行く末を嘆き、人智を超えた力を持つという“尾獣”を崇め奉ることで救われよ
うとしたのだろう。

しかし、特に過激な思想を持っている訳ではない。
そう、ただ、彼らは祈っているだけ。それも、身を隠すように、ひっそりと。
恐らく、自分達の信仰が他から見れば邪教であることを理解していたのだろう。
だから、その存在はほとんど知られていなかったのだ。


しかし、それが半年程前から徐々に信者を増やし始め、それと同時にその教団の存在が噂される
ようになったのだ。
そう、それはまるで『暁』の壊滅を待って、動き出したかのように・・・。


「サスケ。お前がこの辺にいるって情報が、砂に流れてる」

水月はそう言って、サスケを真っ直ぐに見つめる。

「最近、砂隠れの近くでお前を見かけたって情報だ。そりゃ、おかしいだろうよ。確かに、砂もよう
やく噂を聞きつけて動き始めたみてぇだが・・・。サスケ、お前はその時には既に身を隠してた」

水月の言葉に、サスケは頷く。
確かに、サスケは教団の動きを探り始めた頃から、表立っては行動していない。

「何者かが意図的にデマを流したってことか・・・」

サスケは小さく呟く。

「まぁ、それがあの教団かどうかはわからねぇ。けどよ、その目的は明白だと思うぜ」

「・・・ナルト、か・・・」

サスケは唇を噛み締める。

「たぶん、な」

きっと、その情報は木の葉にも伝わっただろいう。そして、もうすぐ砂の里では中忍試験が開催
されるのだ。



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