小説(long)

□一片に、舞う 第1章
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第1章-2


「へっくしゅんっっ!」

ナルトは盛大なくしゃみをすると、ずるっと垂れた鼻水を袖で拭う。

「きたねぇなぁ・・・」

シカマルは呆れたように、ナルトを見やう。

「気ぃ抜いてんじゃねぇよ。最終試験はこれからなんだからな」

シカマルの言葉に、ナルトは「へへっ」と笑う。


「ナルト兄ちゃん、きっと誰かが噂してるんだそ、コレ」

シカマルの視線の先で、同じように中忍試験に参加している木の葉丸が、呆れたように顔を顰め
ながら、ナルトにちり紙を渡していた。

「サンキュってば、木の葉丸」

ナルトはそれを受け取り、大きな音を立てて鼻をかむ。

「緊張感なくなるんだな、コレ・・・」

そうは言いながらも、木の葉丸は少しホッとしたような表情を浮かべた。


ようやく、中忍試験も中盤を過ぎた。
シカマルは今回の中忍試験に関して、木の葉の代表を務めている。
代表といっても、今回のように他里で試験が行われる場合、その中身はまだ幼い者の多い下忍
の保護者として同行しているようなものなのだが・・・。

心配していたナルトも、無事一次・二次試験をクリアし、木の葉からは木の葉丸他7名の下忍と
共に最終試験の予選に臨むことになっていた。

(まぁ、ナルトに関しちゃ、ここまでくりゃ一安心だけどな・・・)

シカマルはそっと、息を吐く。


シカマルとて、ナルトの実力は十分に理解しているつもりだ。
しかし、スリーマンセルを持たないナルトは、同じように、それを持たない者と組まざるを得ない。
本来ならば、中忍試験を受けるかなり前からそれは再編成されるものだが、ナルトはギリギリ
まで中忍試験へのエントリーを見送っていたため、慌てて編成されたマンセルでの参加となった。

中忍試験の一次・二次試験は、主にスリーマンセルのチームワークが問われる内容が多い。
付け焼刃のマンセルでどこまで出来るか、シカマルも正直気が気ではなかったのだ。


しかし、さすが、だと言うべきか・・・。
ナルトは僅かな時間しかなかったにも関わらず、完全に他の二人と打ち解けてしまった。
もともとナルトに憧れを抱いていた彼らは、その親しみやすさに一層信頼を寄せたようだ。
シカマルの不安を他所に、ナルト班は一次・二次試験と、何とも素晴らしいチームワークを見せた。


ナルトは常に成長している。
その個人的な能力は明らかにずば抜けたものだが、ナルトは何でも一人で抱え込むクセがあっ
た。それはある意味、仕方がないことだったのかもしれない。
ナルトはずっと、そうやってきたのだ。そうせざるを、得なかった。
それを強いてきたのは、他の何でもない、里、なのだ。

けれど、この一年でそれも変わってきた。
周りの状況を考えつつ、人を上手く動かすことを身に付け始めていたのだ。
仲間の能力を知り、それぞれの役割り分担をする。どうすれば効率的に、そして的確に任務を
遂行できるのか・・・。ナルトはこの一年で、実践からそれを学んできたのだ。



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