小説(long)

□一片に、舞う 第1章
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第1章-1


病院の屋上。
サクラはそこにあるベンチにドスンと腰を下ろし、両手を上げ、ぐんっと背伸びをする。

「お疲れさん」

気を許していたところに突然声を掛けられ、サクラは驚いて振り返った。

「カカシ、先生っ?!」

「よっ」

そう言って片手を上げたのは、黒いシャツにズボンというラフな格好のカカシ。最初はそんなカカシ
に違和感のあったサクラも、ようやくそれに慣れ始めてきたところだ。
カカシは所狭しと掲げられた洗濯物を器用に避けながら、サクラの座るベンチへと歩み寄る。

「今日は診察ですか?」

サクラは一旦立ち上がり、ベンチの端へと移動する。
カカシは「まあね」と笑顔で言いながら、サクラの隣に「よっこいしょ」と腰を下ろす。

以前は額当てで覆われていたカカシの左目には、今、白い眼帯が嵌められている。
カカシはペイントの戦いで、そこにあった写輪眼を失った。

いや、本当は命を取り留めただけでも、奇跡的なことだったのだ。
瓦礫の下から発見されたカカシは、酷い状況だった。
全身の骨が砕け、いたるところに裂傷、内臓出血が見られた。何よりチャクラの使いすぎで、
体組織そのものが壊死を起こし始めていたのだ。
それでも、僅かに心臓が動いていたのは奇跡、としか言いようがなかった。

カカシは半年間眠り続け、そしてようやく目覚めた時、

『三途の川って、本当にあるんだねぇ・・・。センセ、びっくりしちゃった』

と笑って言っていたが、正直、サクラは笑えなかった。

それから更に半年経った今でも、退院こそしたものの、カカシの体調は万全とは言えない。
それでも、普通に動けるようになっただけでもさすが、と言うべきか・・・。


「一年、か・・・。あっという間だなぁ」

カカシは小さく呟く。
その視線の先には、少しづつだが復興が進み、活気を取り戻しつつある里がある。
サクラは同じようにその光景を見つめながら、ゆっくりと頷く。

あの日、ペインが里に向かって放った『新羅天征』は、里の中心部を丸々全て吹っ飛ばしてしまった。
幸い、里の者は皆、既に非難を終えていたため、その人的被害は最小限で済んだ。
しかし、里を守ろうと戦っていた多くの忍が、そこで死んだものも事実だった。

それでも、人々は再び、そこに建物を立て、里を築く。
それが、死んだ者達への、せめてもの弔いになるのだと、そう、信じて。


残された忍達もこの一年、皆、無我夢中で里を守ってきた。
木の葉の惨状は、瞬く間に世界に広がり、一時は五大国のバランスにも影響が出るのではと
噂された。
けれど、“木の葉の意志”はまだ、此処にあった。
それはとても熱く、そして、強く。

里を愛する心、守りたいと思う、強い気持ち。
それが在る限り、“木の葉”は在り続ける。

それを見せ付けるように、忍達は意欲的に任務をこなした。
そして、その中心を担ってきたのが、サクラ達年代の若い忍、だった。

確実に、次の世代が優秀な忍として育っている。その事実が、木の葉がまだ健在であることを
世に知らしめる、十分な証となったのだ。



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