小説(long)

□一片に、舞う プロローグ
1ページ/4ページ


プロローグ-3


「サスケっ、サスケぇっ!!」


身体を強く揺さぶられ、サスケはカッと目を見開く。その瞳から、幾筋もの涙が伝い落ちる。

「サスケっ!」

滲む視界に映るのは、泣きじゃくったナルトの顔。
自分がそのナルトに抱えられていることに、サスケはようやく気付く。

「ナル、ト・・・」

思わずその手を伸ばし、ナルトの髪に、触れた。

「お前、急にっ、倒れる、からっ・・・」

ナルトは鼻を啜りながら、不安そうな目でサスケを見つめる。


さっきまで、戦っていた相手に、こいつは何してやがんだ・・・。
サスケはふと、そんなことを思う。

「何、で・・・、お前、は・・・」

ボロボロの、ナルト。
傷だらけの、顔。
その顔が、涙と鼻水で、グシャグシャになって・・・。


「お前、イタチと、会ったの、か・・・?」

サスケは身体を起こし、僅かな躊躇の後、ナルトの両頬をその手で包む。指先で流れる涙を拭いながら、
その青い瞳を除きこむ。

「イタ、チ・・・?」

「そう、だ。イタチに会って、何かされなかったか?」

「でも、イタチは・・・」

ナルトは瞳を伏せる。

「イタチは俺に殺される前に、お前と会っていたはずだ」

そう言いきられ、ナルトは「えっと、・・・」と呟きながら僅かに思案する。そして、しばらくして、
「あっ!」と声を上げた。

「会ったんだな?」

「あ、会ったってば、・・・。結構、前、だけど・・・。会って、んでもって、うわっ、思い出したっ!」

ナルトはそう叫んだ途端、ぐえっとその顔を顰めた。

「何、されやがったっ・・・」

「うぇっ、そうだってば、真っ黒い鳥、口ん中押し込まれて・・・。色々あって、忘れてたってば、よぅっ」

ナルトはそう言って、げぇげぇと何かを吐き出そうとする。

「もう遅いんだよ、ウスラトンカチっ・・・」

サスケはぺしっとその両頬を叩き、立ち上がる。


「サス、ケぇ・・・」

ナルトは座り込んだまま、サスケを見上げている。
本当に、こいつは・・・。
サスケは大きく息を吐き、そして両腕を伸ばす。
それを嬉しそうに掴み、ナルトが立ち上がる。
向き合ったナルトを、サスケは睨みつけた。

「俺は、本気で、お前を殺そうとしたんだ・・・」

そう、本気、だった。
そして、そうするだろうと予測していたイタチは、そのためにサスケが九尾に接触しようとしたとき
術が発動するよう、ナルトに仕掛けを施していたのだ。

「でも、俺は、信じてたってばよ・・・」

ナルトは掴んだサスケの腕を、ギュッと握り締める。

「馬鹿かっ、お前は!俺はっ・・・」

「馬鹿でも、いいってばっ!!」



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ