小説(long)

□君を思う、あの空の下
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【第8章】 願い


火影邸の一室。
そこに顔を突き合わせていたのは、五代目火影である綱手とその補佐を務めるシズネ、
そしてカカシとネジである。
カカシは現在、どこの部署にも所属せず、ほぼ火影直轄の任務を単独で担っていた。
一方ネジは、暗部の副部隊長である。
めったなことがない限り、このメンバーで顔を付き合わせることはない。半年前のなると
とサスケの件以来になるだろう。


(か、会話が、ない・・・)

シズネは思わず溜息を付く。
先ほどから、嫌な沈黙が続いているのだ。普段から物静かなネジはともかく、綱手も
カカシも口を閉ざしたままなのだ。
状況が状況だけに、わからないでも、ない。
シズネとて、この会合がどんな意味を持っているのか、知らない訳ではない。
けれど、

(居ずらい・・・)

シズネは再び重い息を吐き、綱手を見やう。
綱手は先ほどから何かしら考えている風で、全くもってこの場の雰囲気など意識
していないのだろう。次に視線を移したカカシも、黙ったまま腕を組み、
瞳を閉じたままだ。
この二人がここまで緊張感を張り巡らせることなど、めったにあることではない。
それだけ、事が重大だということか・・・。

シズネは思わず身体を強張らせる。
そこにコンコンと扉を叩く音が響く。

「シカマルです。蒼(ソウ)と聯(レン)、連れてまいりました」

その声に、綱手が僅かに顔を上げ、シズネを見やう。

「入れ」

シズネは短く言い、姿勢を正す。


「綱手のばぁちゃん、来たってばよっ」

扉が開かれると同時に、なるとの元気な声が部屋に響く。
ようやく綱手の顔にも笑みが戻り、それまで重苦しかった部屋の雰囲気が一気に和らぐ。

「時間通りだな、シカマル。なると、元気だったか?」

「おうっ、じゃ、なかった・・・。『はい』ってば、火影様」

「いや、いい。ここでは変化も解いて構わないぞ。その姿だと私も違和感があるしな」

綱手はそう言ってから、なるとの後ろに立つサスケを見やう。

「サスケ、お前には多少言いたいこともあるが、とりあえず、今は良しとしよう・・・」

わかっているだろうな。
綱手の頬が、僅かにヒクリと動く。


シカマルに続き、部屋に足を踏み入れかけていた二人は顔を見合わせ、僅かに顔を顰める。
そして、一瞬で変化を解く。
ボンッと煙が立ち、そこには幼い姿のなるととサスケが現れた。

「はぁ・・・。やっぱお前ら、そのままなのね・・・」

カカシが表情を緩め、気の抜けた声で言う。

「んもう、いい加減、慣れてってばっ、カカシ先生っ」

なるとが口を尖らせ、カカシを睨む。

「慣れろってなぁ・・・。お前は相変らず楽観的だねぇ。ほら、ネジも驚いてるぞぉ」

カカシは、なるとの視線を軽く交し、ネジを見る。
ネジは眉間に皺を寄せ、無言のままカカシを睨む。

「別に、驚いてなどいない」

ネジはそっけなく言い放ち、立ち上がる。
相手にされず、カカシはつまらなそうに首を竦める。

「久ぶりだな。なると、サスケ」

「うぉっ、ネジだってばっ。すんげぇ、久しぶり!」

なるとの顔がパッと輝く。

ネジは二人の救出の場に立ち会ってはいたものの、実際に目覚めた二人と顔を合わせ
るのはこれが初めてだった。けれど、それ程違和感はない。
屈託なく笑うなるとと、黙ったまま僅かに視線を交し、軽く頭を下げるサスケ。
思わず、懐かしいな、と思う。
ネジは僅かに顔を緩めていた。



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