小説(long)

□君を思う、あの空の下
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【第7章】大切なもの



「“九尾の器”がまだ生きていると?その情報に間違いはないのか」

暗がりに、しゃがれた声が響く。

「はい。間違いないかと・・・」

その場に跪き、恭しく頭を垂れた数人の忍。
それぞれの顔には狐の面、そして二の腕には木の葉の忍を示す刺青。


「“九尾の繭”が消失して半年。五代目からの報告では『生存は確認できず』との
ことだったがな。何か確証でもない限り、あの方には報告すらできん」

しかし、本当に木の葉の里が『九尾』の存在を失った訳ではないのならば、早急に動く
必要があるだろう。

うちはマダラは、失敗した。一度までか、二度までも。
そもそも“うちは”の力を使って九尾の力を手にしようとしたのが間違いだったのか・・・。
もともと、18年前にあ奴は死ぬはずだったが。
あの四代目さえ、邪魔をしなければ・・・。

全ての予定が狂ったのは、あの気に食わぬ若者、四代目のせいなのだ。
いや、始まりはあの三代目か・・・。

(裏切り、者め・・・)


我ら木の葉の里は、『火の国』のためにある−−−。
火の国の確固たる繁栄のために、九尾の力を手に入れること。
それが、我らが『使命』でもあったはず。
それなのに・・・。

四代目に引き続き、五代目までもが我らの意志を、存在の意義を理解できぬとは。

「嘆かわしいことではないか・・・」

このままでは、あの方に顔向けできん。
火の国も、この木の葉の里も平和ボケし過ぎているのだ。
人の世の平和など、絶対的な支配なくしては在りえない。そして、それに必要なのは
“絶対的な力”。人の手など及ばぬ、自然界で最も尊いもの。


「良いか。生きているのなら何としてでも“九尾の器”を見つけ出せ」

そして、手に入れろ。
そう、どんな手を使ってもかまわん。その力をあの方に献上するために・・・。

「時間が惜しい。すぐに動け」

「御意」

気配が散る。訪れた、静寂。



「もう、時間がない・・・」

我らは歳を取り過ぎた−−−。
これが最後の機会だろう。何があっても、どんな手を使ってでも、九尾の力を手に入れ
なければならない。
そう、これは火の国を守る『隠れ里』としての役目。

なぜ、わからぬのだ。これが、忍の運命。
忍とは、すなわち道具。国の繁栄のために使われる存在。
だからこそ、生かされる存在。
忍の里の平和は、守る国があってこそ・・・。
国が望むものを、命がけで手に入れる。それが、“忍”だったはず。

正しい道は、我らが再び導くのだ。

全ては、『国』のために−−−。



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