小説(long)

□君を思う、あの空の下
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【第5章】 動き出す未来


「やはり、退行しているのは身体だけか・・・」

綱手は目の前にいる幼い二人を交互に見やう。思わず、ため息が漏れる。

「カカシの台詞じゃないが、お前らはまぁ、いろいろとやらかしてくれるよ・・・」


なるとが目覚めてすぐ、サスケも意識を取り戻した。
突然起こった、身体の変化・・・。それは二人にとっても想像していなかったことらしく、
幼くなったお互いを、ただ呆然と見つめるだけだった。

「どういう、ことだ・・・?」

サスケの呟きに、綱手、そしてその場にいたカカシ、シズネも大きなため息をついた。


「こっちが、聞きたいよ・・・」

カカシは半ばあきれて二人を見つめる。その姿は、スリーマンセルを組んだばかりの
頃の二人を見ているようだった。
二人が目覚めれば、何かしらわかると思っていたのに、肝心の二人も状況をまるで
把握していない・・・。

けれど、その見目から心配していた二人の記憶は、3年前、九尾の檻の中で眠りに
ついた時から途切れている状態だった。つまり、記憶は失われていない・・・。
ということは、精神的な退行は起こっていないということ。
外見は12歳程度だが、二人は確かにあの頃の15歳の二人なのだ。

二人にしてみても、目を覚ましてみたら突然3年という月日が流れていて、さらに
その身体はその分をまるで逆行したように、幼いそれに変化していたのだ。
正直、何が何だか、わからない。

なるとは傍らのサスケの腕をギュッと掴む。
サスケはそれに気付き、なるとの身体をそっと抱き寄せる。


その様子を見て、カカシは思わず笑みを漏らした。

(あの頃はあんなに仲が悪かったのにねぇ・・・)

今の二人は、きっと想いを通じ合わせたのだろう。何となくわかっていたことだが、
幼い姿のそれは、カカシにしてみれば違和感を感じずにはいられないのだ。

そんなカカシの様子に気付いたのか、サスケがあからさまに顔をしかめる。
それでも、なるとを抱きしめた腕を緩めることなく、さらに抱き寄せた。


その様子を見て、笑い出したのは綱手だった。

「綱手、様・・・?」

シズネが訳もわからず、綱手を心配げに見つめる。

「いや、何でもない。なあ、カカシ・・・」

綱手はカカシに視線を向ける。その顔はまだ必死に笑いをこらえていた。

「まぁ、無事でなにより、だったさ」



綱手にしてみれば、二人は多少若返っても孫のような存在には変わりはない。
確かに、問題は山積みだ。これまでのことは、全て内密にことを運んでいるが、
このままでいられる訳がない。
そう、二人がこの里で忍として生きていくためには、それなりの策が必要だろう・・・。

けれど、今はまだ、二人が無事だったことを、素直に喜べばいい。
ようやく、何かが動き出す。そんな予感・・・。

だからこそ、今を大切にするのだと−−−。



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