小説(long)

□君を思う、あの空の下
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【第4章】求めるもの


いつまで、待てばいいのだろうか。
ずっと、このままなのだろうか。
二人は本当に、此処にいるのだろうか・・・。


サクラは何度となく同じ疑問を繰り返す。この場所にくると、いつもそうだった。
一見、目の前には何もない。けれど、そこにある確かな存在・・・。
忍びであれば誰でも気づく、何重にも張られた結界。
特殊な幻術を操ることのできる、彼らしい、それ。

そして、その結界の中にある、“九尾の繭”。
今それがどんな状態なのか、外からは窺い知ることができない。



あれから既に、3年の年月が流れていた。


あの日から伸ばしていたサクラの髪は、いつのまにか腰の辺りまで長くなった。
3年前、まだ少女の面影を残していたサクラも、その年月を経て、今では立派な大人
の女性へと成長していた。
優秀な医療忍者として、最前線で任務に就く日々・・・。
けれど、サクラの心は、3年前のあの日から一歩も進めずにいた。


「サクラ・・・」

不意に名を呼ばれ、サクラは慌てて振り返る。

「綱手、様・・・」

「また、此処に来ていたのか・・・。気持ちはわからなくもないが、な」


忘れろ、とは言わない。けれど、そろそろ自分のことも考えろ−−−。
綱手には、何度もそう言われていた。
きっと、綱手には、サクラの心の内など全て見透かされているのだろう。
サクラは静かにため息をつく。


二人には生きていて欲しい。
戻ってきて欲しい。
無事な姿をちゃんと、見せて欲しい・・・。
そう思う反面、サクラは不安で仕方がないのだ。怖くて、どうしようもない・・・。
今此処に取り残されている自分。置いて行かれた、自分。
自分に二人を待つ資格があるのだろうか−−−。

「サクラ、考えすぎるな。お前の悪い癖だ」

綱手の暖かな手が、サクラの頭を撫でる。

「あいつら、戻ってきたら覚悟しておくんだな。私がボコボコにしてやるっ」

心配掛けた罰だ、当然だろう?
綱手の言葉に、サクラは久しぶりの笑みを漏らした。

「死なない程度に、お願いします・・・」

サクラの言葉に、綱手は豪快に笑った。



自分は、どうするだろうか・・・。
二人が戻ってきたとき、どんな顔ができるだろか・・・。
サクラは空を仰ぎ見る。

真っ青な空、いつか見た、どこまでも続く、青−−−。



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