小説(long)

□君を思う、あの空の下
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【第1章】そこに在るもの


「サスケ君、目が覚めた?」

視線に映るピンクの髪。

「サク・・・ラ・・・」

「そうよ・・・、ちゃんとわかる?」

「ああ・・・」

相変わらず、身体は思うように動かない。それでも痛みは随分と引いていた。

「俺、また眠って・・・」

「仕方ないわ。薬も効いてるし」


何度目かの覚醒。
あれからどれ位たったのか・・・。少しずつ現実に近づいていく。


「今日はすごくいい天気なの。見える?」
ほら、窓の向こう。

「すごい青空。もう、夏が来るわ」

サクラの声がひどく優しく響く。
目を向けた窓の向こうは、雲ひとつない青空。どこまでも続く青・・・。
重なる記憶。

「どのくらいだ・・・?」

「えっ?」

「俺がここにきてから、どのくらい経ってるんだ?」

「あぁ・・・、そうね。少しは落ち着いたのかしら?」

サクラはわずかに顔を伏せ、静かに息を吐く。

「綱手様を呼ぶわ。私からは何も話せないし」

私は何も聞かされていないから・・・。
サクラの緑色の瞳が静かに揺らぐ。

「ううん、違うわ。聞けなかったの・・・。だって」
だって、“なるとがいない”から。

サスケが戻ってきたのに。
一緒に喜びを分かち合うはずのなるとがいない・・・。
サクラは唇をかみ締める。

自分はもう子どもではないと、思っていた。
サスケが里を抜けたときとは違う。
一人前の忍びとして、常に冷静に、感情を表に出すことなく、全てを処理する。
なのに、なのに自分はこんなにも怖い。

「サスケ君・・・」

今、サクラの目の前にいる確かな存在。その存在の確かさを分かち合う者。
思いは小さな音となって口から漏れ落ちた。

「なるとは、なるとはどこにいっちゃったの?」



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