小説(long)

□君を思う、あの空の下
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君を思う、あの空の下。


【プロローグ】


重い瞼を上げる。
滲む景色は、残酷なほど赤黒く彩られている。
木々が焼け付く匂い、立ち込めた煙を無意識に吸い込み思わず咽る。
身体は軋み、思うように動かない。
整わない呼吸を繰り返しながら、それでも目を凝らす。


遠くで爆音が響く。何かが破裂したような音とともに、地響きが伝わってくる。

「ここは・・・、どこだ・・・?」

思わずこぼれた言葉は、掠れているが確かに自分の声だと認識する。

再び爆音。地面が引き裂かれるような凄まじい音と爆風。

「サスケ、ここも危険だ」

聞き覚えのある声が近くでする。

「サスケ!しっかりしろっ!」

腕を強く掴まれ身体が無理やり引き起こされる。
しかし、身体は言うことをきかない。
自分自身の身体のはずなのに、どこに力を入れていいのかすらわからない。
痛みがあるのかすら、わからない・・・。

「くそっ、とにかくここから少しでも離れるぞ!」


視界の先には地獄の業火。
どす黒い炎が全てのものを焼き払うかのように渦巻いている。

「なる・・・と・・・」

その名が無意識に口から出た。
なぜだか急に不安が襲う。

「なると・・・は、どこだ・・・?」

壊れそうなほど、心臓が高鳴る。

「・・・っく、あいつは・・・」

「あいつとの約束だ」

俺の腕を掴んでいた男は、そのまま俺の身体を担ぎ上げた。
その男の片目は、赤い。

「安心しろ。お前だけは、死なせない。木の葉に、連れて帰る・・・。それがあいつの望みだから」



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