小説(short)

□優しい手
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□□ 優しい手 □□


木の葉の里にも冬がある。
比較的温暖なこの里も、雪が降ることはほとんどないけれど、冬という季節を迎えれば、それなり
に、寒い。

そんな中、第7班はあいも変わらず、ほとんど雑用に近いEランク任務に就いていた。
そう、それは畑の草取り−−−。
働き手を失った老夫婦からの依頼により、種まきの始まる春に向け、収穫後ほったらかしに
伸び放題になっていた草を一掃する。それが、今回の任務だ。


そんな中、ケホッ、ケホッとサスケが小さく咳き込む。

「サスケくん、まだ咳が出てるじゃないっ」

サクラが慌てたように駆け寄り、サスケを覗き込む。

「少し休んだら?サスケくんの分はナルトにやらせるから、ね?」

「余計な心配、すんな・・・。大丈夫だ」

サスケは冷たくそう言って、サクラを押しやる。


「んもおっ、ちょっと、ナルトっ。あんたのせいだからねっ!」

サクラが叫ぶ。
ナルトは二人から数メートル離れた処で、黙り込んだまま、枯れて硬くなった草を引き抜く。

「ちょっとっ、聞いてるのっ?!」

反応のないナルトに痺れを切らし、サクラはナルトに歩み寄る。

「あんたがはしゃいんであんなヘマするから、サスケくんが風邪引いたんだからねっ。わかってんの?!」

ビシッと人差し指を向けられ、ナルトは掴んでいた草をギュッと握り締める。

「わかって、るって、ば・・・」


そう、二日前の任務。それは、めずらしくCランクのものだった。
火の国の一大名の護衛。
といっても、その大名は同盟国である風の国への観光に赴くだけのため、本来護衛などといった
ものが必要な訳ではない。
それでも、大名という地位に就く者としては、護衛の忍の何人かは連れて行かねば格好がつかな
いのだろう。
とりあえず、といった様子での任務依頼であった。

それでも、普段、任務とは名ばかりの雑用をこなす下忍たちにとっては、Cランク、それも大名の
『護衛任務』とあっては、張り切るのも仕方がない。
ナルトは終始、ご機嫌だった。
浮かれて、いたのだ。
ほとんど、遠足気分で、その任務に就いていた。

けれど、運悪く、物取り目的の盗賊に奇襲を掛けられた。
何とか追い払ったものの、ナルトはその盗賊との応戦中、川に落ちてしまったのだ。
それを助けてくれたのは、サスケ。
季節は冬。川の水も随分と冷たかった。
ずぶ濡れになってしまったものの、護衛任務を途中で止める訳にはいかない。
結局、二人は風の国に着くまで、その状態のままだった。


次の日、集合場所に現れたサスケは、その目が僅かに赤らんでいた。

「ちょっと、サスケくんっ。風邪引いたんじゃないの?」

サクラはそう言って、ナルトを睨みつけた。

「大丈夫だ。大事を取って早めに薬も飲んだ」

忍にとって、己の身体の管理も任務の内。サスケとて、無理をする気はなかった。
それに、・・・。

なるとと目が合う。
その瞳が、僅かに揺れていた。



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